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熊沢千絵マイ・ストーリー
 『火垂るの墓』と兄のこと
 読書の秋。千絵さんの心に残っている本は? と尋ねたところ、返ってきた答えは『火垂るの墓』。舞台は太平洋戦争真っ只中の日本。両親を戦災で亡くした幼い兄と妹が、親戚に引き取られるが、(親戚と)うまくいかずに、家を飛び出して、防空壕や路上で、二人っきりで生活をするという物語だ。
 同名のアニメ映画などもヒットしたので、ご存知の読者も多いだろう。
 「何度読んでも、泣いてしまうんです。ああいう時代があって、今の平和があるんだ、ということを忘れてはいけないな、何でも手にできることを普通と思ってはいけないな、という気持ちにさせられる一冊です」
 感動する部分は多々あるが、中でも兄が妹に自分の食事を分けてあげるところでは、涙を抑えられないそう。
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熊沢千絵マイ・ストーリー

お互いに独立をして、会う機会が少なくなったものの、たまに会っても昔と変わらぬ会話ができるのが兄妹の特権。
「娘のことも自分の子供のように可愛がってくれて、きちんと叱ってくれるのが嬉しいです」
 「自らも幼く、空腹なのに、『自分は大丈夫だから』と妹に食事を与えるその姿に、兄妹の強い絆を感じるんです」
 千絵さんにも、3歳違いのお兄様がいる。
 「兄と妹が主人公ということで、感情移入をしてしまうのかもしれませんね。我が家も兄妹仲はいいんです。子供の頃は、いつも兄の後を追っかけてました。兄は優しくて穏やか。私は気持ちが表に出てしまうタイプなのに、兄は何かあってもわりと自分の胸にしまうタイプです。もめごとが嫌いで、平和主義。子供の頃はよく、周りの人に“お兄ちゃんと千絵ちゃんの性格が逆なら良かったのにねぇ”なんて、言われていました」
 と笑う。
 「そういえば、学生時代に辛いことがあり、両親にも言いづらくて、ひとりで悩んでいたことがあったんです。でも、やっぱり誰かに話を聞いてほしくて、一人暮らしをしていた兄を訪ねたことがありました。兄は黙って話を聞いてくれて、特別に何かを言うわけではなかったけれど、私の好きなものを作って『いっぱい食べろよ』と言ってくれました」
 話しながら、こんなエピソードを思い出した。あまりに自然な行為だから、普段取り立てて、感謝をすることもないけれど、振り返れば、こんなふうに、お兄様の小さな心配りに何度も救われている千絵さん。
 「両親には照れくさくて相談しにくい、
たとえば若い頃だったら、恋愛の話なども、兄にはスンナリと相談できました」
 普段は、口数の少ないお兄様に「1分でいいから黙っててくれない?」などと言われ、ムッとする千絵さん。
 それでも、やっぱりお兄様は誰にも代えられない大切な人なのだ。
 「不思議なんですが、兄は私の仕事や人生がうまくいっているときほど、心配をしてくれます。普通、人はうまくいっていないときに、心配をするもの。そういうときよりも、うまくいっているときに心配して、アドバイスしてくれるのが、兄らしい。いつもは照れくさくて、とても面と向かっては言えないけれど、ふとした瞬間に『ああ、(兄が)いてくれて良かった』と思う。感謝しています」
※この記事は2004年Grazia11月号に掲載されたものです。
illustration by Miyagi Yukari
text by Ikeno Sachiko