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フランソワ・ジラール監督&マイケル・ピット/来日会見レポート
 90年代の『アダムス・ファミリー』シリーズや『キャスパー』といった作品で、ユニークな名子役として人気を集めたクリスティーナ・リッチ。その後もイメージを大きく変えることなく、メジャーからインディーズ、コメディからシリアスなドラマまで、あらゆるジャンルの壁を飛び越えた活躍ぶりを見せる大人の女優へと成長した。

「シルク」

 そんな彼女がタイトルロールを演じた新作『ペネロピ』は、どこかヨーロッパの香りが漂うロマンティックなおとぎ話。先祖が魔女にかけられた呪いのせいで、なんと豚の鼻と耳を持って生まれてしまった女の子ペネロピが、周囲の好奇の目をよそに、自分自身の力で運命を切り開き、やがて真実の愛を見つけていく。

「子供の頃は、アンデルセンの『みにくいアヒルの子』の物語が一番のお気に入りでした。実は今回の映画に出たいと思った理由のひとつが、おとぎ話仕立てだということだったんです。長い間、そういう作品をやってみたかったので、オファーをいただいたときは、すごく興奮しました(笑)。しかも脚本がとてもおもしろいし、主人公のペネロピのキャラクターが賢くて愛らしいところにも惹かれました。彼女は豚の鼻を持って生まれてきてしまい、25年間、家に閉じ込められて育ちます。なのに、そんな環境でも自己を見失わずに、自分らしい世界を作り上げていくクリエイティヴな力を持っている。その芯の強さが本当にすごいなぁと思いました。脚本で一番驚いたのは、最後にひねりが加えられているところですね。自分を受け入れること、ありのままの自分を愛すること、といったパワフルなメッセージも胸に響き、この映画にぜひ出演したいという気持ちが強まりました」

 プロデューサーを務めたのは、『キューティ・ブロンド』シリーズで大ブレイクし、05年の『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』で、アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ、主要な映画賞を総なめにしたリース・ウィザースプーン。製作だけでなく、ペネロピの親友となる姉御肌の頼もしい女性アニー役でも出演している。

「実はリースとは長い付き合いなんです。この映画は、彼女の映画製作プロダクション“タイプA・フィルムズ”が手がけ、世に送り出した初めての作品になります。彼女は常に高いクオリティーを周囲の人間にも求めるタイプなので、記念すべき初めての映画に、私を主演に考えてくれたことがすごく嬉しかったですね。実際の撮影の頃は、彼女はアカデミー賞授賞式の準備などで、とても忙しくて……見事オスカーを勝ち取ったわけなんですが(笑)、あまり現場には来られなかったんです。でも、私たちが共演するシーンの撮影時には、一緒に楽しい時間を過ごせました。リースって、とてもおもしろい人で、それでいて頭もキレるんです(笑)」
KEIKOの今月公開のオススメ3本
フランソワ・ジール監督&マイケル・ピット/来日会見レポート

「シルク」
「シルク」
 裕福な名家の一人娘として生まれながら、先祖が魔女にかけられた呪いのせいで、豚の鼻と耳をつけて生まれてきたペネロピ(クリスティーナ・リッチ)。「この呪いを解くには、お前たちの“仲間”が娘に永遠の愛を誓うこと」という魔女のお告げを信じる両親は、ペネロピが適齢期になるやいなや、自分たちと同じ“仲間”であるはずの、上流階級出身の花婿候補たちとのお見合いを続けさせる。しかし、財産目当ての彼らも、ペネロピの姿を見ると、みんな一目散に逃げ出すばかり。そんな中、ペネロピの前に、唯一自分の姿を見ても逃げなかった青年マックス(ジェームズ・マカヴォイ)が現れて――。

監督 マーク・パランスキー
製作+出演 リース・ウィザースプーン
『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』
出演 クリスティーナ・リッチ
『モンスター』
ジェームズ・マカヴォイ
『ラストキング・オブ・スコットランド』
キャサリン・オハラ
『ホーム・アローン』
リチャード・E・グラント
『ヘンリー&ジューン/私が愛した男と女』
配給 東京テアトル+デスペラード
● 3月1日よりテアトルタイムズスクエアほかにて全国順次公開

 ペネロピが外の世界へ踏み出すきっかけを与える青年マックスを演じるのは、『ラストキング・オブ・スコットランド』で2006年度の英アカデミー賞のライジング・スター賞を受賞したほか、キーラ・ナイトレイ共演の『つぐない』、アン・ハサウェイ共演の『Becoming Jane』など、今後も話題作への出演が続くジェームズ・マカヴォイ。

「彼は本当にすばらしい俳優で、とても献身的に、すべてのシーンに命を吹き込んでくれました。また、観る人に強いシンパシーを感じさせる愛らしい瞳をしていて、このキャラクターに何か魔法のようなものを与えてくれたんじゃないかなと思います」

 ロケ地は、おとぎ話が似合う街ロンドン。衣装、映像、デザインなど、美術チームが念入りに築き上げた、幻想的なビジュアルの美しさも見どころのひとつだ。

「この物語はすばらしいメタファーだと思います。人間はみんな、大なり小なりコンプレックスを抱えていて、そのコンプレックスにとらわれすぎてしまうと、自分の人生を楽しんで生きることができない。だから、どこかで踏み出す必要がある。そういった部分もみなさんにぜひ感じ取っていただきたいです。おとぎ話の形を取っていますが、ペネロピ自身も白馬に乗った王子様に救われるわけではなく、自分自身の手で自分を救います。言い換えれば、自分自身が白馬の王子様になっているんです」
KEIKOの今月公開のオススメ3本
『4ヶ月、3週と2日』
『ノーカントリー』
『地上5センチの恋心』
『4ヶ月、3週と2日』
迫真の演技に込められた
自由を求める女性の孤独と心の叫び

 第60回カンヌ国際映画祭で、パルムドール(最高賞)を受賞した話題作。1987年、独裁政権末期のルーマニアで、望まない妊娠をしたルームメイトの違法中絶を手助けするヒロインの1日の出来事が描かれる。中絶をテーマにした映画はいくつかあるが、本作は冒頭からラストまで、主人公の行動を疑似体験しているような生々しさと緊迫感が衝撃的。45歳に満たない女性は子供を4人産むまで避妊や中絶は禁止――という当時の政令に立ち向かう主人公の勇気と凛とした強さが、逆境の中の希望の光となって胸に残る。

監督・脚本/クリスティアン・ムンジウ 出演/アナマリア・マリンカ ●銀座テアトルシネマほかにて全国順次公開中
 『ノーカントリー』
圧倒的な存在感を放つ殺人者が恐怖を呼び起こす犯罪スリラー

 独特のスタイルを持つコーエン兄弟が、ピューリッツァー賞作家コーマック・マッカーシーの小説『血と暴力の国』を映画化。テキサスを舞台に、偶然大金を見つけたベトナム帰還兵と、彼を狙う謎の殺し屋、そして正義を信じる保安官という3人が、先の読めない逃亡劇を繰り広げる。ハードな描写を抑制し、静寂によって恐怖心や焦燥感をジワジワ煽る演出に、コーエン兄弟ならではのセンスがキラリ。理解を超越した暴力の連鎖。私たちも今、そんな恐ろしい世界に身を置いていることをまざまざと思い知らされる。

監督・脚本/ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン『ファーゴ』
●3月15日より日比谷シャンテシネほかにて全国順次公開

『地上5センチの恋心』
チャーミングなヒロインが教える自分らしい本当の幸せの見つけ方

 平凡な主婦オデットが、憧れのロマンス作家に書いたファンレター。サイン会で思いきって手渡した一通の手紙が、彼女と作家それぞれの運命を変えていく。大人のラブ・コメディの形を取りながら、フランス映画らしく、しみじみとした人生の味わいを感じさせる作品。何よりもロマンティックな少女の感性と、地に足の着いた成熟さをあわせ持つヒロインを演じたカトリーヌ・フロの魅力的なこと! 幸せオーラが周囲の人をもふんわり包み込むオデットの姿は、こんなふうに年を重ねたいと思わせる女の理想形だ。


監督・脚本/エリック=エマニュエル・シュミット 出演/カトリーヌ・フロ ●シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開中

Profile: 石塚圭子

フリーライター。Graziaをはじめ、女性誌各誌で活躍中。
映画コラムをはじめ、幅広くカルチャーコラムを手掛ける。わかりやすい解説と独自の鋭い視点には定評がある。