定期購読のお申し込みはこちらから女性誌ネットはこちら
Home
Interior
Food
Travel
Culture
Beauty
Fashion
Grazia Models
Backstage
今月のGrazia
Present&Info
Culture Topへ
Backnumber
ロバート・デ・ニーロ/来日会見レポート
  アメリカ映画界を代表する演技派スター、ロバート・デ・ニーロが、このたび監督として、壮大な大河ドラマを撮り上げた。CIAのベテラン諜報員の20数年に及ぶ波乱万丈の人生。現代アメリカの裏面史をスリリングに追いながら、非情な仕事に全身全霊を捧げる男と、その家族の苦悩というテーマをじっくりとあぶり出していく手腕がさすがだ。実はデ・ニーロが監督を務めるのは、今回が2本目。監督デビュー作の『ブロンクス物語/愛につつまれた街』からは、13年もの歳月が流れている。

グッド・シェパード

「私は興味を持ったものだけしか作りたくないし、軽い気持ちでは映画を監督することなどできません。『グッド・シェパード』の企画に関わったのは8〜9年前なんですが、これほど時間がかかったのは、軌道に乗るまでが大変だったからです。最初は、同じCIAをテーマにした別の物語を企画していました。そんなとき『グッド・シェパード』の脚本をたまたま読む機会があって、すごくおもしろかった。それで、このシナリオを手がけたアカデミー賞脚本家のエリック・ロスに“僕の企画を一緒にやってくれないか?”と頼んだところ、“まず『グッド・シェパード』を監督してもらえるなら、その次にあなたの企画の脚本を書きますよ”という返事がきました。そこで私はもともとの自分の企画をいったん捨てて、この映画を監督したんです(笑)」

 CIAやスパイを題材にしたハリウッド映画といえば、派手なアクション満載のエンターテインメント的なイメージが強いけれど、この映画はどこまでもリアル。CIAという特殊な組織がどのように誕生し、諜報員たちがどのような生活を送っていたのか。あらゆるディテールにいたるまで、驚くべき未知の世界の“真実”が正確に描かれている。

「1964年から30年間にわたってCIAに在籍し、作戦指揮官として活躍してきたミルト・ベアデン氏に、CIAテクニカル・アドバイザーとして加わってもらいました。私が映画作りで大切にしているのは、ただ正直に、そしてリアルに撮ること。ストーリー的におもしろいと思うものを、観客がリアルだと感じられるように作っています」


グッド・シェパード
KEIKOの今月公開のオススメ3本
グッド・シェパード
グッド・シェパード
グッド・シェパード

 第二次大戦前夜のアメリカ。イエール大学でエリート・コースを歩んできたエドワード・ウィルソン(マット・デイモン)は、在学中にサリヴァン将軍(ロバート・デ・ニーロ)にスカウトされ、戦時中の戦略事務局(OSS)で諜報活動に従事。終戦後はOSSの延長線上に創設されたCIAの一員となり、ソ連との冷戦に身を投じる。長年、任務のために、妻クローバー(アンジェリーナ・ジョリー)や息子との家庭を犠牲に生きてきた彼は、CIA最大の汚点と言われた“ピッグス湾事件”の失敗の原因を究明する過程で、国を守るか、家族を守るかの選択を迫られることになるーー。

監督・製作
・出演
ロバート・デ・ニーロ
『レイジング・ブル』
出演 マット・デイモン
『ディパーテッド』
アンジェリーナ・ジョリー
『Mr.&Mrs.スミス』
ウィリアム・ハート
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
ジョン・タトゥーロ
『トランスフォーマー』
アレック・ボールドウィン
『ディパーテッド』
配給 東宝東和
●10月20日より日劇1ほかにて全国順次公開

 クリント・イーストウッドをはじめ、名優が監督としても素晴らしい映画を撮るケースは少なくない。俳優として長年培ってきたものが、演出をする上でも確実に生かされるわけで、デ・ニーロの場合はキャスティングのこだわりにそれが表れている。

「俳優というのは、自分をさらけ出すという作業を、何度も繰り返さなければいけないのがつらい。その間、監督は椅子に座っているだけ。しかし、俳優は出番が終われば2〜3日の休暇があるけれど、監督にはまだまだ仕事がある(笑)。でも私は監督業が好きです。『ブロンクス物語〜』ではアマチュアを即興で演技指導しましたが、『グッド・シェパード』ではプロを起用しました。私にとって、キャストが一番重要です。役にぴったりだと感じられるキャストでなければ、作る価値がありません。それはプロだろうと、素人だろうと同じです。例えば今回、主人公の部下役には、ジョン・タトゥーロがファースト・チョイスで決まっていました。ただタトゥーロの母が病気だったため、彼が出ていない場面を先に撮って、彼の気持ちが回復するのを待ち、後からまとめて彼のシーンを撮影したんです」

 主人公エドワード・ウィルソンを演じるのは、『ディパーテッド』や『オーシャンズ13』、11月公開の『ボーン・アルティメイタム』など、今ハリウッドで最も波に乗っている俳優のひとり、マット・デイモン。

「実は主役には3人ほど候補がいました。一番手はレオナルド・ディカプリオだったのですが、彼が多忙だったため、次の候補のマット・デイモンがやってくれることになりました。マットは自分のギャラも下げてくれ、経済的な面でも貢献してくれたんですよ(笑)」

 デ・ニーロが監督する作品なら、ギャラなど二の次。何としてでも出演したい! というのが俳優たちの本音だろう。スケジュールの都合が合わなかったディカプリオは、さぞかし悔しかったに違いない。マット・デイモンのほかにも、『Mr.&Mrs.スミス』以来のスクリーン登場となるアンジェリーナ・ジョリーや、ウィリアム・ハート、アレック・ボールドウィンなど、ベテランの演技派スターが脇をかためるという豪華さ。本年度のベルリン国際映画祭で、芸術貢献賞を受賞した彼らのアンサンブル演技もじっくり堪能したい。
KEIKOの今月公開のオススメ3本
『アフター・ウェディング』
『アフター・ウェディング』
運命に直面したときに改めて知る家族の大切さの本当の意味

 今やハリウッドからも注目を集めるデンマークの実力派女性監督が手がけた人間ドラマ。インドで孤児の救助活動に従事する男が、面識のないデンマーク人の実業家から巨額の寄付金の申し出を受ける。デンマークでの面談後、実業家の娘の結婚式に強引に誘われた彼は、そこで思いがけない女性に再会して――。ミステリアスな展開を楽しみつつも、物語が進むにつれて鮮明に浮かび上がるのは、愛と孤独、家族や夫婦の絆といった数々のテーマ。死を目前とした人間を根底から支える、家族への愛の深さが胸を打つ。

監督/スサンネ・ビア『しあわせな孤独』 出演/マッツ・ミケルセン ●シネカノン有楽町1丁目ほかにて全国順次公開中
『レディ・チャタレー』
『レディ・チャタレー』
“チャタレー裁判”から50周年、20世紀を代表する恋愛文学を映画化

 英国小説家D.H.ロレンスの『チャタレー夫人の恋人』が、フランスの女性監督による新解釈でよみがえった。3つのヴァージョンがある原作の中で、広く知られているのは第3稿の決定版だが、今回採用されたのは第2稿の物語。ヒロインのコンスタンスと森の猟番パーキンの関係に焦点が絞られ、恋に落ちた2人が階級の差を越えて深く結びついていく過程が繊細に、官能的に描かれる。光り輝く森の美しい自然に囲まれた彼らの恋はどこまでもみずみずしく、人を愛する本質的な喜びが画面いっぱいにあふれている。

監督/パスカル・フェラン『a.b.c.の可能性』 出演/マリナ・ハンズ ●11月3日よりシネマライズほかにて全国順次公開
『この道は母へとつづく』
『この道は母へとつづく』
幼い少年が自分で道を切り開く実話から生まれた感動の物語

 ロシアの孤児院で育てられ、幸運にも裕福なイタリア人夫妻の養子に選ばれた6歳の少年。しかし彼は「本当のママに会いたい」という想いに突き動かされ、ある日、孤児院を脱走する。知恵と勇気を総動員して、顔も知らない生みの母を探し求める少年と、金づるを逃がすまいと必死になる養子縁組の仲介業者とのスリリングな追跡劇。登場する子供たちのほとんどが実際の孤児院にいる少年少女で、彼らの切実な感情が痛いほど伝わってくる。タフで健気な主人公の少年が、ラストシーンで見せる表情が忘れられない。

監督/アンドレイ・クラフチューク 出演/コーリャ・スピリドノフ ●Bunkamuraル・シネマほかにて全国順次公開中
Profile: 石塚圭子

フリーライター。Graziaをはじめ、女性誌各誌で活躍中。
映画コラムをはじめ、幅広くカルチャーコラムを手掛ける。わかりやすい解説と独自の鋭い視点には定評がある。