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ミヒャエル・ホーフマン監督、フランク・エーラー(シェフ)/来日会見レポート
厨房で逢いましょう

 食べることが大好きな人や、料理をすることに喜びを感じる人をはじめ、多くのファンに愛される“料理映画”のジャンルに、また新たな作品が登場した。
 レストランの厨房で、密かに逢瀬を重ねる天才シェフと平凡な主婦のプラトニックな恋物語を描いた『厨房で逢いましょう』。監督のミヒャエル・ホーフマンと、劇中のオリジナル料理を手がけたシェフのフランク・エーラーの来日会見が、料理の映画にふさわしく、フランス料理店“シェ松尾 青山サロン”でおこなわれた。


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厨房で逢いましょう

 無口で、ちょっと変わり者だけれど、超一級の料理の腕前を持つ天才シェフ、グレゴア(ヨーゼフ・オステンドルフ)。南ドイツの保養地でレストランを営む彼は、休憩時間に訪れるカフェで、ウェイトレスとして働く平凡な主婦エデン(シャルロット・ロシュ)と知り合う。グレゴアの作ったプラリネを一口食べたとたん、彼の味のとりこになってしまったエデンは、5歳の娘と一緒に、グレゴアの厨房をしばしば訪れるようになる。そして、そんなエデンにいつしか恋をしてしまったグレゴアは、彼女を喜ばせるために、これまでよりさらに腕に磨きをかけ、美味しい料理を次々と生み出していくのだが……。

監督・脚本 ミヒャエル・ホーフマン
出演 ヨーゼフ・オステンドルフ
『戦争のはじめかた』
シャルロット・ロシュ
デーヴィト・シュトリーゾフ
『ヒトラー/最期の12日間』
配給 ビターズ・エンド
●8月25日よりBunkamuraル・シネマほかにて全国順次ロードショー

レストランでは、映画の冒頭シーンから次々と映し出される魅惑的な料理、名づけて“エロチック・キュイジーヌ”を再現。
“ノルウェー産スモークサーモンのアスピックとショー・フロア アネットの香り”
“ルージェのポワレ オレンジのクルスティアンと共に 黒のソース”
“仔鴨胸肉のロースト エピス風味 カカオパヒュームのジュ”
“ガトーオペラとプラリネのトリュフ”

といった、目にも美しく、五感を刺激するような数々のメニューが用意された。

監督「シェフのフランク・エーラー氏に初めて会ったとき、彼が私のために、8品目のコースメニューを作ってくれました。おまかせだったので、何が出てくるのか、私には分かりませんでした。その料理が本当にすばらしくて、『私の映画を一緒にやってくれる人は、彼しかいない!』と確信したんです。そういう意味で、私たち2人はお互いに一目惚れしたようなものですね(笑)。彼の料理を食べて、“食は人生を変えることができる”という言葉は本当だと実感しました」

 劇中、ヒロインのエデンが、シェフのグレゴアの作る料理に強く惹きつけられるきっかけとなるのが、グレゴアがエデンの娘の誕生日にプレゼントしたプラリネを載せたチョコレート・ケーキ。

監督「プラリネが登場するシーンは、とても重要でした。あそこからすべてが始まります。グレゴアが作ったプラリネを食べたエデンと娘は、2人ともその味に夢中になり、特にエデンは彼を厨房まで訪ねていきます。はたしてプラリネがどのような意味を持ち、どんな味がしたのか? その魅力を映像にするのは、とても難しかったですね」

シェフ「あのプラリネは、正確な温度で、最も上質なカカオを使っています。一口食べると、まるで天国にいるようなプラリネを作ることにこだわりました」

 無口で人付き合いの苦手なグレゴアに代わって、さまざまな想いを雄弁に語ってくれる彼の創作料理“エロチック・キュイジーヌ”の数々。それらを撮影用としてではなく、すべて本物の料理として作り上げたフランク・エーラー氏は、ミシュランで1つ星を獲得しているドイツの有名な料理人である。グルメガイドブック“GAULT MILLAU(ゴー・ミヨ)”誌では“今年の発見”、“メニュー・オブ・ザ・イヤー”を受賞し、『世界で最もクリエイティブな料理人として5本の指に入る』と絶賛された。2005年からは、日本最高のフランス料理専門家であった故・辻静雄が毎年訪れ、その料理を堪能していたというドイツの5つ星ホテル“エルププリンツ”のレストランで料理長を務めている。

シェフ「“エロチック・キュイジーヌ”とは、呼び名は少し宣伝的かもしれませんが、その名のとおり、非常に官能的な料理です。情熱、ハート、愛を注ぎ込んで作られているのです。調理の際に、料理人はクリエイティブであると同時に繊細であり、料理に対して謙虚でなければなりません。料理の中に愛をこめ、料理を食べてくださるお客様に、その愛を伝える。食べた方は料理を通して、日常の中に埋もれてしまった自分自身の感覚を、もう一度鋭敏に目覚めさせることができる。それこそが私の考える“エロチック・キュイジーヌ”です。シェフではなく、できあがった料理が主役だと思っています」

 スパイスの効いた大人のラブストーリーであるだけでなく、“食”の秘める魔法的なパワーも感じさせてくれるこの映画。視覚とハートで存分に味わってみてほしい。
KEIKOの今月公開のオススメ3本
『ミス・ポター』
『ミス・ポター』
“ピーターラビット”原作者の夢と愛に満ちたカラフルな人生

 子供から大人まで、世界中で愛されている“ピーターラビット”の作者ビアトリクス・ポター。上流階級の女性が仕事を持つことなどあり得なかった20世紀初頭のイギリスで、アーティストとして生きようとした彼女の知られざる半生は、メルヘンなイメージからは想像もつかないほどドラマティックだ。力を合わせてベストセラー絵本を世に送り出した編集者との恋、突然の不幸、そして湖水地方の自然を守るという第2の壮大な夢。好きなことに打ち込むうちに、自分も周囲も幸せにしていく彼女の生き方に魅了される。

出演/レニー・ゼルウィガー『シンデレラマン』、ユアン・マクレガー『アイランド』 ●9月中旬より日劇3ほかにて全国順次公開
『厨房で逢いましょう』
『厨房で逢いましょう』
魅惑的な料理の数々が登場するプラトニックな大人の恋の物語

 他人とコミュニケーションを取ることが苦手な孤高の天才シェフが、平凡な主婦に恋をした。愛を告白することなど思いもよらない彼は、彼女の食欲を満たすため、ただひたむきに美味しい料理を作り続けるが、その料理はいつしか彼女や、彼女の家族の人生をも変えていく――。予測不能なストーリー全体を貫くのは、大切な人に料理を作る純粋な喜びと、食こそ人間のすべての欲求の源であるというメッセージ。ドイツの5つ星ホテル『エルププリンツ』の料理長が手がけたオリジナル料理の麗しい映像にも注目を。

監督・脚本/ミヒャエル・ホーフマン 出演/ヨーゼフ・オステンドルフ ●Bunkamura ル・シネマほかにて全国順次公開中
『シッコ』
『シッコ』
今や他人事とは言い切れない超大国アメリカの驚くべき医療事情

 少年のような正義感と独特のユーモア・センスを武器に、世のタブーに真っ向から挑むドキュメンタリー映画作家、マイケル・ムーアの新たなテーマは医療問題。先進国で唯一、公的な国民健康保険制度がないアメリカで、国民がどれほど恐ろしい状況にさらされているかを、驚愕の事実を積み重ねることで、まざまざと実感させてくれる。日本も“医療構造改革”で、医療分野の民営化を進めようとしている時期だけに、涙を誘う彼らの姿が明日の我が身に見えること必至。この機会にできるだけ多くの人に観てほしい。

監督・脚本・製作/マイケル・ムーア『ボウリング・フォー・コロンバイン』『華氏911』 ●シネマGAGA! ほかにて全国順次公開中
Profile: 石塚圭子

フリーライター。Graziaをはじめ、女性誌各誌で活躍中。
映画コラムをはじめ、幅広くカルチャーコラムを手掛ける。わかりやすい解説と独自の鋭い視点には定評がある。