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マーク・フォースター監督/来日会見レポート
マーク・フォースター監督/来日会見レポート

 悲劇作家が執筆中の小説の主人公が、ある日、自分の運命に死が用意されていることを知り、その結末を変えようと奮闘する――。そんな奇想天外かつユーモラスな設定で私たちを驚かせながら、人生の愛や喜びの存在に改めて気づかせてくれるストーリー。

『主人公は僕だった』の脚本を読んだ多くの有名監督が関心を示す中、最終的に選ばれたのは、これまでに『チョコレート』や『ネバーランド』などの作品で絶賛されてきたマーク・フォースター監督だった。深みのある人間ドラマのイメージが強い彼だけれど、意外にも本作は、コミカルな要素がふんだんに盛り込まれたファンタジーである。
『主人公は僕だった』
KEIKOの今月公開のオススメ3本

『主人公は僕だった』
『主人公は僕だった』

 時計の針のように正確で、几帳面すぎる生活を送っていた、国税庁の会計検察官ハロルド(ウィル・フェレル)。ある日、彼の頭の中に、彼の行動をすべて描写する女性のナレーションが聞こえてきた。文学理論の大学教授ジュールズ・ヒルバート(ダスティン・ホフマン)の助けを借りたハロルドは、声の主が、悲劇作家として著名なカレン・アイフル(エマ・トンプソン)であることを突き止める。なんとハロルドは、カレンが執筆している小説の主人公だったのだ! どうやら我が運命が“死”に向かっているらしいと知った彼は、何とか自分の物語を喜劇にするべく生活を変え始めるのだが……。

監督 マーク・フォースター
『ネバーランド』
出演 ウィル・フェレル
『プロデューサーズ』
エマ・トンプソン
『ハワーズ・エンド』
ダスティン・ホフマン
『レインマン』
マギー・ギレンホール
『ワールド・トレード・センター』
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
●5月19日(土)よりみゆき座ほか全国東宝洋画系にてロードショー
「実はずっとコメディを作ってみたかったんです。でも、自分のユーモアのセンスに合うものが、なかなか見つからなくて……。私はヨーロッパ出身(ドイツ生まれ、スイス育ち)なので、いわゆるアメリカン・コメディの笑いは、自分の感性とはちょっと違うんですよね。今回の映画を撮ってみて、演出する上でのトーンを見つけるのは、ドラマよりも喜劇のほうがすごく難しいと分かりました」

 まだ30代の若手ながら、01年の『チョコレート』では、ハル・ベリーにアカデミー賞主演女優賞をもたらし、04年の『ネバーランド』では主演男優賞(ジョニー・デップ)や作品賞を含め、7部門でアカデミー賞にノミネートされるなど、フォースター監督の才能は世界中が認めるところ。彼自身は評価の高いドラマのジャンルに安住するのではなく、次々と新しい題材を手がけることに意欲的だ。

「撮る作品を決めるときは、いつも自分の直感に頼っています。何よりも自分が情熱を持てるかどうか。監督には2種類のタイプがあると思うんです。まずはヒッチコックのように、常にスリラーというジャンルにこだわり、その世界を極めていくタイプ。次に、ビリー・ワイルダー監督のように、常に違うものに挑戦していくタイプ。私は後者ですね。失敗するかもしれない……という緊張感を持って、新しいものにチャレンジしていくと、どんどん触発されるし、よりクリエイティヴになれるような気がします」

 一見、穏やかで物静かな雰囲気を漂わせている監督だが、映画にかける情熱やこだわりはかなりのもの。そのパッションが強い引力となって、彼の作品には、いつも演技派として知られる俳優たちがこぞって出演する。今回は、生真面目な主人公ハロルド役に、人気コメディアンのウィル・フェレルがキャスティングされたほか、ダスティン・ホフマンやエマ・トンプソンといった名優たちが脇をかため、個性豊かな演技を見せてくれる。

「この『主人公は僕だった』は、生命そのものを肯定している映画です。今の世の中では、そういう映画はとても必要なものだと思います。最初に脚本を読んだとき“運命は自分自身で切り開いたり、変えていったり、ある程度コントロールすることができるのだ”というポジティヴなコンセプトに惹かれたので、その想いがみなさんに伝わると嬉しいです」
KEIKOの今月公開のオススメ3本
『ゾディアック』
『ゾディアック』
男たちの運命を狂わせる
連続殺人鬼が仕掛けた罠


 メディアを通して暗号文や犯行声明を世に発表し続けた、全米史上初の劇場型連続殺人鬼ゾディアック。今なお未解決の実際の事件をテーマに、犯人の謎にのめりこんだ4人の男たちの危険な追跡劇が描かれる。新聞社の花形記者、見習いの風刺漫画家、コンビを組む2人のベテラン刑事。立場も個性も異なる登場人物たちは、それぞれのやり方で真実に迫ろうとするが、その執念はやがて彼らのキャリアや結婚生活、健康までも狂わせていく。人間心理の不思議さに焦点を当てた、臨場感あふれる知的な犯罪スリラー。

監督/デビッド・フィンチャー『セブン』 出演/ジェイク・ギレンホール ●6月16日より丸の内プラゼールほかにて全国順次公開
『あるスキャンダルの覚え書き』
『あるスキャンダルの覚え書き』
他者との関わりを渇望する
現代人の孤独を描く人間ドラマ

 華のある新任の美術教師シーバに魅力を感じ、何とか親しくなろうとする中学校教師のバーバラ。ある日、シーバが15歳の男子生徒と不倫しているという事実を目撃したバーバラは、その秘密を守る代わりに、シーバとの生涯続く“友情”を要求するのだが……。猫と暮らす初老の独身女であっても、幸せな家庭を持つ女であっても、胸の奥に感じる孤独の深さの点では変わりはない。ともに今年のアカデミー賞にノミネートされたジュディ・デンチとケイト・ブランシェットの迫真の演技が女の弱さ、怖さをあぶり出す。

監督/リチャード・エアー『アイリス』 出演/ジュディ・デンチ『リディック』 ●6月2日よりシャンテシネほかにて全国順次公開
『ハリウッドランド』
『ハリウッドランド』
ハリウッドのタブーに挑む
味わい深いサスペンス

 1959年6月16日、TV版「スーパーマン」シリーズの主演俳優ジョージ・リーブス死亡。当時、自殺で片付けられたスキャンダラスな事件の裏側が、私立探偵の視線によって暴かれていく。鍵となるのは、当たり役に恵まれながら、スーパーヒーローのイメージが固定したことに苦悩するジョージと、年上の愛人として物心両面で彼を支えた映画会社の重役夫人トニーとの恋愛。ダイアン・レイン演じるトニーは魅力的な大人の女だが、彼女のすべてを受け入れ、父性的な愛で包みこむ夫との特別な関係もまた心に残る。

出演/エイドリアン・ブロディ『キング・コング』、ダイアン・レイン『運命の女』 ●6月16日よりシャンテシネほかにて全国順次公開
Profile: 石塚圭子

フリーライター。Graziaをはじめ、女性誌各誌で活躍中。
映画コラムをはじめ、幅広くカルチャーコラムを手掛ける。わかりやすい解説と独自の鋭い視点には定評がある。