定期購読のお申し込みはこちらから女性誌ネットはこちら
Home
Interior
Food
Travel
Culture
Beauty
Fashion
Grazia Models
Backstage
今月のGrazia
Present&Info
Culture Topへ
Backnumber
チャン・ヤン監督/来日会見レポート

チャン・ヤン監督/来日会見レポート

 中国で大ヒットしたオムニバス形式のラブストーリー『スパイシー・ラブスープ』や、ハートウォーミングな親子の人間ドラマ『こころの湯』などで注目を集める新進気鋭のチャン・ヤン監督。彼の最新作は、1970年代から90年代までの劇的に変わりゆく北京を舞台に描く、ある家族の物語だ。主人公シャンヤンは、監督と同じ1967年生まれという設定。まずは監督が70年代、80年代、90年代という3つの時代背景について語ってくれた。

「1976年という年は、文化大革命の終焉の年でした。父の世代は政治的にも苦難の時代で、当時は政治運動にもまれ、子供をかまう暇もないほどでした。両親とも職場で何かにつけて批判されるなど、社会において辛い目にあっていたため、家に帰ってくると、子供のしつけに対してすぐ手が出てしまうという面もありました。でも基本的に子供にとっては、自由気ままな良い時代でもあったのです。

 80年代は中国にとって封鎖的だった時代から、開放政策に転じた時期でした。外国から中国に、いろいろなものが急激に入ってきました。この時期は私の高校・大学時代に重なります。カルチャー面ではロックが入ってきたことを、とても強烈に覚えています。ファッションにも大きな変化がもたらされ、特に広州では最先端のベルボトムやロングヘアなどが流行りました。しかしそれは、両親の世代には受け入れられず、若者の感覚についていけない親世代とのギャップが表面化しました。

KEIKOの今月公開のオススメ3本

『胡同(フートン)のひまわり』
『胡同(フートン)のひまわり』

 1976年、北京の下町。文化大革命後、強制労働へとかり出されていた父親が6年ぶりに帰ってきた。それまで母と2人で自由に暮らしていた9歳の少年シャンヤンに、父は絶たれた画家への夢を託し、厳しい英才教育をほどこしていく。やがて生じる父と息子の衝突。それは現代中国の激動の変化を背景に繰り広げられる、親子の30年間にわたる愛と葛藤の日々の始まりだった――。

監督・脚本 チャン・ヤン『こころの湯』
出演 スン・ハイイン
『上海家族』
ジョアン・チェン『ラストエンペラー』
配給 東芝エンタテインメント
●Bunkamuraル・シネマほかにて全国順次公開中
 また90年代は経済が活性化した時代でした。思想的にも海外と変わらない考え方をするようになりました。70年代はみんなが貧しく、精神重視の時代でしたが、90年代はお金ですべての価値観を判断してしまうようになり、貧富の差が現れてきました。かつて両親が一生かかって稼いだ賃金が、子供たち世代の1年分に相当するなど、貨幣価値もまったく変わったのです。親の世代は90年代の拝金主義にはとてもついていけませんでした」

 タイトルになっている胡同(フートン)とは、北京の伝統的な民家である四合院(しごういん)が建ち並ぶ古い路地や横町のこと。2008年の北京オリンピックに向け、大規模な都市開発が進展している現在、北京独特の庶民文化を生んできた胡同の数は4分の1にまで減少した。スクリーンに映し出される昔懐かしい胡同の街並みの大半は、スタジオのセットとして再現されたものだ。

「北京はこれまで古い建物をよく保存していたと思います。しかし、ここ20年の再開発では、盲目的にビルを建てることが経済発展につながるという信仰によって、とても速いスピードでビルの建設を進めてきました。実は最近になって政府は、北京の特色を残すことが北京という街を生かすことだと気づいたのですが、すでに後の祭りでした。私が少年時代に住んでいた四合院は、かつて西太后の宦官たちが住んでいたという、70家族もが暮らす長屋のような建物でした。母は『不便で住みづらい』と言って、近代的なアパートに住みたがっていましたね(笑)。個人的には便利な生活を求める方向に行くことはよいとは思いますが、開発とともに生活文化がすっかり変わってしまったことは事実です。生活にゆったりとしたリズムがなくなり、四合院の持つ独特で濃密な大家族的関係が消えてしまいました。アパートの浸透とともに、人々が疎遠になっていくように感じています」

 日本でも昭和30年代の東京を舞台にした『ALWAYS 三丁目の夕日』のヒットが記憶に新しい。場所や時代は違っても、近代化によって失われてしまった素朴な暮らしへの郷愁や、そこで暮らす庶民のひたむきさは現代社会に生きる私たちの深い共感を呼ぶ。

「今回私が描いたのは、政治や経済の変化ではなく、世界共通の父と子の問題です。この映画を観て、父と子の関係の中にある苦しみや絆を感じて、自分の親子関係を見つめ直すきっかけにしていただけたら嬉しいですね」

『胡同のひまわり』公開記念 “レイ家菜(レイカサイ)”スペシャルメニュー 『胡同のひまわり』公開記念 “レイ家菜(レイカサイ)”スペシャルメニュー

“レイ家菜(レイカサイ)”は、かつて胡同の奥で、看板も出さず、ひっそり営業していた知る人ぞ知る宮廷料理の名店。オーナーのレイシャンリン氏の祖父ズーチャー氏は、清王朝の高級官僚で、美食家としても名高い西太后の日常の食事(家常菜)を管理する責任者でした。文化大革命後の1984年、レイシャンリン氏の次女が、代々受け継がれた門外不出のレシピを教わり、中国料理雑誌主催の家庭料理コンクールに参加したところ、1800人の中から第1位に! 翌年、周囲の勧めで料理店を始めることになり、北京の胡同にある自宅を改築し、“レイ家菜”と名づけました。今回、この“レイ家菜(レイカサイ)”の東京店により、映画の公開に合わせた期間限定の特別メニューが楽しめます。

ご予約の際は『胡同のひまわり』特別コースとお伝えください。(2名様から)


●レイ家菜(レイカサイ)東京店
東京都港区六本木6-12-2 六本木ヒルズ六本木けやき坂通り TEL 03-5413-9561

KEIKOの今月公開のオススメ3本
『マッチポイント』
『マッチポイント』
イギリス上流階級を舞台に描くサスペンスに満ちた人間ドラマ

 ウディ・アレン監督がNYを離れ、初めてロンドンで撮影した最新作。元テニス選手の男が、大金持ちの青年のテニス・コーチになった縁で、彼の妹と結婚。憧れの上流階級への仲間入りを果たしたのも束の間、セクシーなアメリカ人女性との情事をきっかけに、男の運命は少しずつ狂い始めていく。どんなに努力をしても“運”に左右される部分が人生には確かにある。その中で必死に生きようとする人間の健気さと滑稽さ。アレンらしい皮肉の効いたラストにニヤリとさせられたあと、しばし物思いにふけってしまう。

監督・脚本/ウディ・アレン 出演/ジョナサン・リース・メイヤーズ ●8月19日より恵比寿ガーデンシネマほかにて全国順次公開
『トランスアメリカ』
『トランスアメリカ』
世にも複雑な親子の奇妙で味わい深いロードムービー


 若い頃から男性としての自分に違和感を抱いてきたトランスセクシュアル(性同一性障害)の主人公。ある日、存在すら知らなかった実の息子が突然現れ、2人はひょんなことから、NYからLAへの大陸横断の旅に出る。“女への性転換手術を受ける直前の男性”という難役に挑戦したのは男優ではなく、個性的な演技派女優として知られるフェリシティ・ハフマン。彼女の名演で、特殊な設定にもかかわらず、家族との関係に悩み、世の中に戸惑いを感じたことのある人なら誰もが共感できる普遍的な物語に仕上がった。

監督/ダンカン・タッカー 出演/フェリシティ・ハフマン『デスパレートな妻たち』 ●シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開中
『狩人と犬、最後の旅』
『狩人と犬、最後の旅』
自然と共存する実在の狩人の
厳しくも喜びにあふれた世界



 カナダ・ロッキー山脈で生きてきた実在の狩人ノーマン・ウィンターの真実のドラマ。伝統的な狩猟方法を貫くことで生態系のバランスを調節してきたものの、今では大規模な森林伐採により動物の数も減少。彼はついに今年限りで山を去ろうと決意するが……。馬やカヌー、犬ぞりで移動し、住む家もすべて手作りする彼の究極にシンプルな生き方は感動的。ちなみにノーマンはクリント・イーストウッドを髣髴とさせるハンサムでセクシーな男性。パートナーの女性との尊敬の念と愛情に満ちた暮らしぶりにも憧れる。

監督・脚本/ニコラス・ヴァニエ 出演/ノーマン・ウィンター ●8月12日よりテアトルタイムズスクエアほかにて全国順次公開
Profile: 石塚圭子

フリーライター。Graziaをはじめ、女性誌各誌で活躍中。
映画コラムをはじめ、幅広くカルチャーコラムを手掛ける。わかりやすい解説と独自の鋭い視点には定評がある。