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ナタリー・ポートマン来日会見レポート

 愛らしくチャーミングな微笑みと気品のある美しさ、そして20代半ばにして内面からにじみ出る聡明さから、オードリー・ヘプバーンの再来ともいわれるナタリー・ポートマン。

7年ぶりの来日となるこの日は、穴あきのブルージーンズに、デコルテ部分がシースルーになったエレガントなデザインの白いブラウスというコーディネイトで姿を見せた。
 最新主演作となる『V フォー・ヴェンデッタ』は、あの『マトリックス』三部作を創ったクリエイター&プロデューサーが仕掛ける、政治色の強い実験的なスリラーである。
『V フォー・ヴェンデッタ』
©2006 Warner Bros. Entertainment Inc.
「ハリウッドのビッグな娯楽作でありながら、ちゃんと中身のある映画、という部分に惹かれました。この映画は観客に対して、いろんな質問を投げかけます。でも、その答えは提示していません。ベストな質問というのは、その人が一生考えても結論が出ないものではないかと私は思っています。この映画が提供しているのは『暴力にはいい暴力と悪い暴力があるのか?』また『暴力は時と場合によって、正当化することができるのか、できないのか?』という質問です。でもそういう難しいことは別にして、2時間ただ座って映画を観たいという方にも、もちろん楽しんでいただける映画です」

 彼女が今回演じたのは、ミステリアスな革命家と出会ったことで、平凡なOLから勇敢な社会活動家へと変貌をとげていくヒロイン、イヴィー。
『V フォー・ヴェンデッタ』
©2006 Warner Bros. Entertainment Inc.

「イヴィーは両親が政治犯だったという生い立ちもあって、政治に関わることをとても怖がっている女性です。そんな彼女が最終的にはテロリズムを通して、自分の考えを表現するという段階にまで変化する。その過程で、彼女は非常にユニークな道のりをたどることになるわけですが、なぜ彼女が変わるのか? 彼女自身の意思で変わるのか? あるいは誰かが操作して変わっていくのか? そのあたりの判断も観客のみなさんにゆだねるような描かれ方になっています。私はイスラエルの出身ですが、そこでは今も毎日テロや暴力が日常茶飯事に起きています。そういう国に育った人間としては、いい悪いは別として、なぜ人間は自分の主義思想を表現するために暴力に頼るのか? ということに興味を持っています。そういう意味でもイヴィーを演じるのはおもしろかったですね」

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『V フォー・ヴェンデッタ』
『V フォー・ヴェンデッタ』
©2006 Warner Bros. Entertainment Inc.

 独裁国家と化した近未来のイギリス。テレビ局で働くイヴィー(ナタリー・ポートマン)は、ある晩、外出禁止時刻の11時を過ぎて出歩いているところを秘密警察に見つかってしまう。絶体絶命の危機に見舞われた彼女を助けてくれたのが、“V”とだけ名乗る仮面の男(ヒューゴ・ウィービング)だった。恐怖政治に抑圧された市民を暴君の手から解放することを目指すVの素性が明らかになるにつれ、自分自身についての真実も知るようになるイヴィー。はからずもVの協力者となった彼女は、腐りきった社会に自由と正義を取り戻すために立ち上がる――。

監督 ジェイムズ・マクティーグ
製作 ジョエル・シルバー『マトリックス』シリーズ
脚本 アンディ&ラリー・ウォシャウスキー『マトリックス』シリーズ
出演 ナタリー・ポートマン『レオン』、『クローサー』
ヒューゴ・ウィービング『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ
スティーブン・レイ『ことの終わり』
配給 ワーナー・ブラザース映画
●4月22日(土)より渋谷東急ほか全国松竹・東急系にてロードショー

『V フォー・ヴェンデッタ』
日本語版オフィシャルサイト
http://www.v-for-vendetta.jp
ワーナー・ブラザース映画
オフィシャルサイト
http://www.warnerbros.jp
 記憶に残る鮮明なビジュアル表現が多いこの映画、中でも衝撃的なインパクトがあるのが、何者かに囚われたイヴィーが拷問をされた際に、泣きながら褐色の美しい髪をバリカンで本当に刈られていくシーンだ。今でこそ、短めのショートカットが似合っている彼女だけれど、完全に丸坊主の姿になるには勇気がいったのではないだろうか。

『V フォー・ヴェンデッタ』「もともとスキンヘッドにしてみたいなぁという気持ちはあったんですが、今まではなかなか勇気がなかったんです。それが今回、どうしてもやらなくてはいけない! という機会が訪れたので、やってみました(笑)。ただ、実際にカメラの前で髪を刈るわけですから、撮り直しはききません。本番1回しかチャンスがないので『失敗したら、どうしよう……』と考えると怖かったですね。5台のカメラを使って撮影したんですが、ミスがあってはいけないからと、5台とも何度もテストをして。バリカンがちゃんと使えるかどうかを試すために、別の人の頭を刈ったりもしたんです! 私自身も演技に集中しなければならなかったので、とても緊張しました。でもすごくいい経験でした。スキンヘッドにしてから困ったのは、街を歩いているときに周囲の人の注目を集めてしまうこと。それまでは私、女優っぽくなくて、どこにいても街の中に溶け込んでしまうことができたのに、スキンヘッドだと目立ちすぎて、すぐに私だと見破られちゃったんです(笑)」

 94年の大ヒット作『レオン』のヒロインに抜擢されたときは、まだたったの12歳。当時のインタビューでは「女優になる気はない」と言っていたナタリーは、高校時代、女優の仕事を続けながらも成績はオールA。ハーバード大学では心理学を専攻し、見事4年で卒業した後は、これまで以上に多彩な作品に出演するようになった。今までのイメージを覆すようなストリッパー役に挑戦した04年の『クローサー』では、ゴールデン・グローブ賞助演女優賞を獲得。名実ともに、ハリウッドを代表する実力派の女優へと成長した。

「実はまだ、これから一生女優を続けることを決心しているわけではありません。でも今の時点では、いつも楽しみながら演技をしていますし、女優という職業にも満足しています。演技には、社会的に有意義な面もあると思います。たとえば2時間の映画を観に行くと、その間は他のことは忘れて、映画の中の登場人物たちに感情移入しながら、彼らの人生を生きますよね。他人の欲望、希望、悲しさ、喜び……いろんな感情を体験します。そして映画が終わって、劇場から出てきたとき、通りを歩いている人を見て『あの人たちはどんな1日を過ごしたのかな?』と思えるようになる。そんなふうに他人を思いやる気持ちを育てるのが演劇であり、映画です。そこに携わることができるのが俳優ですし、そんなすばらしい社会的機能を持った職業についていることをラッキーだと思っています」
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『ナイロビの蜂』
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極上のサスペンスを通して描く美しく壮大なラブストーリー

 冒険小説の巨匠ジョン・ル・カレの原作を、アフリカの雄大な大地を舞台に映画化。英国人外交官の妻が何者かに殺された。彼女の死の真相が明らかになるにつれ、官僚と大手製薬会社による世界的陰謀が浮かび上がる。対照的な性格ながら深く愛し合っていた夫婦が、妻の死後、さらに崇高な愛へたどり着くまでの過程に、思わず涙がこぼれてしまう。自らの命を賭けても正義を貫く妻を演じたレイチェル・ワイズは、この役で本年度のアカデミー賞助演女優賞を受賞。知的で情熱的な彼女の心揺さぶる演技は必見だ。

監督/フェルナンド・メイレレス 出演/レイフ・ファインズ ●5月13日より丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にて公開
『ブロークン・フラワーズ』
『ブロークン・フラワーズ』
ユーモアとせつなさが入り交じる愛すべきダメ男の人生の旅

 ルックスはさえないけれど、お金持ちで女ったらしの中年男ドン。独身貴族で通してきた彼のもとに、今まで知らなかった息子の存在を告げる差出人不明の手紙が届く。手紙の手がかりを求めて、ドンはアメリカ全土に散った20年前の恋人たちを訪ねるが――。いきなり自分の家にやってきた昔の男を前にして、それぞれ個性的な対応を見せてくれるのは、シャロン・ストーンやジェシカ・ラングといったベテラン女優たち。いくつもの恋愛や結婚を経て、人生の悲哀も孤独も知った大人の女ならではの存在感が頼もしい。

監督/ジム・ジャームッシュ 出演/ビル・マーレイ『ロスト・イン・トランスレーション』 ●シネマライズほかにて全国順次公開中
『戦場のアリア』
『戦場のアリア』
国境を越える人間愛に満ちた今なお語り継がれる戦場の奇跡

 1914年、第一次大戦下のクリスマス・イヴ。戦況が熾烈さを極める中、フランス・スコットランド連合軍と、ドイツ軍の兵士たちが“クリスマス休戦”として友好をむすぶ特別な一夜を過ごした。いかにもファンタジックなおとぎ話に聞こえるかもしれないが、これは史実として残る本当のエピソード。美しい音楽にも、家族を想う気持ちにも、境界線などない。ノー・マンズ・ランドに集まった各国の兵士が「聖しこの夜」を合唱するユーモラスなシーンに微笑むと同時に、戦争の愚かさやむなしさが胸にこみ上げてくる。

出演/ダイアン・クルーガー『トロイ』、ギヨーム・カネ『美しき運命の傷痕』 ●シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開中
Profile: 石塚圭子

フリーライター。Graziaをはじめ、女性誌各誌で活躍中。
映画コラムをはじめ、幅広くカルチャーコラムを手掛ける。わかりやすい解説と独自の鋭い視点には定評がある。