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エマニュエル・ベアール、ダニス・タノヴィッチ監督/来日会見レポート

 私たち同性をもうっとりさせる美貌と知性を併せ持った女優エマニュエル・ベアールと、デビュー作『ノー・マンズ・ランド』でアカデミー賞外国語映画賞をはじめ、数々の賞を受賞したボスニア出身のダニス・タノヴィッチ監督がそろって来日した。2人の新作は、三姉妹とその母親という4人の女性のドラマを描いた『美しき運命の傷痕』。思いがけぬ愛の悲劇に翻弄されながら、やがて運命を受け入れ、強く生き抜こうと決意するまでの彼女たちの心理描写が、ジワジワと胸に染みこんでくるほどの深い共感を呼ぶ。

タノヴィッチ監督「この映画には女性が多く登場しますが、女性も男性も同じ人間なので、基本的に感情は同じ。そこに差はありません。長女のソフィを演じてくれたベアールは本当にすばらしく、とても特殊な女優です。情熱的で、150%の力を持って現場に挑みます。この映画の女性たちにリアリティを感じていただけたとしたら、それは女優の力です」

ベアール「つらい苦しみを演じる女たちに、監督はユーモアと笑いと命を与えてくれました。シリアスな物語なので、撮影現場も過酷だと思われがちですが、実際はとても楽しかったです(笑)」

 もともとは、『トリコロール』三部作や『ふたりのベロニカ』といった数多くの傑作を生み出し、96年に急逝したポーランドのクシシュトフ・キェシロフスキ監督の遺稿が原案。世界中のファンに崇拝された亡き名匠にオマージュを捧げつつ、タノヴィッチ監督は物語を大胆に脚色し、よりスリリングでドラマチックな作品へと昇華させた。


『美しき運命の傷痕』

タノヴィッチ監督「キシェロフスキの遺稿であることに、特にプレッシャーはありませんでした。私は94年のサラエボでボスニア紛争のドキュメンタリーを撮っていたときに感じて以来、プレッシャーというものを感じたことはありません。今回この企画を引き受けたのは、自分では描けない、自分とはまったく正反対の世界が描かれていたからです。キシェロフスキの遺稿を読んで、彼は天才だとつくづく思いました。これほど深いところまで、女性の世界に入っていくなんて……」

 表面上はクールにふるまいながらも、心の中では嫉妬や不安、憧れ、憎しみといった複雑な情念を抱えて生きる女たち。どこか向田邦子の『阿修羅のごとく』に登場する姉妹を彷彿とさせる、三姉妹のキャラクター像はそれぞれ実に個性的だ。

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エマニュエル・ベアール、ダニス・タノヴィッチ監督/来日会見レポート
『美しき運命の傷痕』
『美しき運命の傷痕』
22年前に起こった不幸な出来事によって父親を失った三姉妹。以来、心に傷を負った彼女たちは美しく成長した今も、それぞれの問題に直面している。夫の浮気に悩む長女ソフィ、男性になかなか心を開くことができず、恋人のいない孤独な日々を過ごす次女セリーヌ、年の離れた大学教授との不倫関係に苦しむ三女アンヌ。そして、彼女たちの母親もまた、ある秘密を抱えていた――。

監督 ・脚色 ダニス・タノヴィッチ『ノー・マンズ・ランド』
原案 クシシュトフ・キェシロフスキ『ふたりのベロニカ』
出演 エマニュエル・ベアール
『8人の女たち』
カリン・ヴィアール
『不倫の公式』
マリー・ジラン
『ラスト・ハーレム』
キャロル・ブーケ
『美しすぎて』
配給 ビターズ・エンド
●4月8日よりBunkamuraル・シネマ、銀座テアトルシネマほかにて全国順次公開
タノヴィッチ監督「私にも子供が3人います。同じ家で、同じものを食べて、同じように育つのに、不思議と性格は異なります。映画にも、その違いを出したいと思いました。人間は差があるからこそ、おもしろいものなのです。姉妹を描くうえで、キェシロフスキ作品の『トリコロール』三部作のように、それぞれ3色のテーマカラーを持たせることを考えました。ベアールは役柄と本人の個性を含め、“赤”以外のイメージは浮かびませんでした。それだけ情熱的なのです」

ベアール「私自身は作品そのもの以前に、監督の目に惹かれました。そしてその後に、シナリオやキャラクターに惹かれました。この映画は、感情の動きが細やかで感動的です。三姉妹には、子供の頃に父親を失ったというルーツがあります。そのトラウマをそれぞれが暮らすうちに、どのように消化して、再会にいたるのか。そこに興味を持ちました」

 実生活では父親の異なる長女と長男、2人の子供を持つシングルマザーであるエマニュエル・ベアール。演技派女優として話題作に次々と出演するだけでなく、96年からユニセフ大使、2002年からはユニセフ親善大使を務めたり、不法滞在者支援のデモに参加して逮捕されたりと、人道活動にも熱心な女優として知られている。彼女の内面からあふれ出る情熱は、そのままスクリーンにも現れて、圧倒的な存在感とパワーを感じさせる。

ベアール「いくつかの映画に出演しましたが、私の出るシーンにはいつも、何百億円もの大金をかけたCG等の特殊効果はありません(笑)。女優ができることは、要求されるキャラクターを演じることだけです。カメラマン、録音、照明……、そして映画を製作するための資金を集めるプロデューサーなど、本当にたくさんの方がいて、1本の映画が成立するのです。監督にしろ、私にしろ、映画ごとにカバンに荷物を詰め込み、2〜3ヶ月間、撮影現場にいる。それが仕事です。日本もそうでしょうけれど、フランスも今の映画界はマクドナルド化しています。その状況が悪い、アメリカが悪いとは言いませんけれど、こういった環境の中で、フランス映画や他の国の良質な映画を上映するのは、すばらしいことだと思っています」

世界中から愛される傑作をリバイバル上映!

ふたりのベロニカ
『美しき運命の傷痕』の原案を手がけ、10年前に54歳の若さでこの世を去ったポーランド出身の巨匠クシシュトフ・キェシロフスキ。このたび、『美しき運命の傷痕』の公開を記念して、彼の最高傑作ともいうべき『ふたりのベロニカ』をはじめとする数々の作品のリバイバル上映が決定した。この機会に、キェシロフスキが描く運命的な物語の世界を堪能してみてはいかが?

◆『ふたりのベロニカ』<ニュープリント>
3月25日〜4月7日 Bunkamuraル・シネマにて限定ロードショー
◆“キェシロフスキ・コレクション”
『トリコロール』三部作、『デカローグ』を含む全14プログラム
3月18日よりシネマ・アンジェリカにて一挙上映

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『リトル・イタリーの恋』恋のすれ違いをせつなく描いたロマンティックなラブストーリー

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監督・脚本・出演/ミランダ・ジュライ 出演/ジョン・ホークス●4月8日より渋谷シネ・アミューズほかにて全国順次公開
Profile: 石塚圭子

フリーライター。Graziaをはじめ、女性誌各誌で活躍中。
映画コラムをはじめ、幅広くカルチャーコラムを手掛ける。わかりやすい解説と独自の鋭い視点には定評がある。