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ココナッツブームで年商7億。ママ起業家の出した結論は? [mi-mollet]

2018年07月29日(日) 10時00分配信

撮影/横山翔平(t.cube)

ココナッツオイルブームの火付け役であり、年商7億円の会社「ブラウンシュガーファースト」の経営者になった荻野みどりさん。本人曰く「こじらせまくった20代」を経て、ようやく心の底からやりたいと思うものに出会えた。しかし女性がフルに働くとなると、立ちはだかるのが家庭との両立問題。やりたいことと育児を両立させるために荻野さんがとった選択とは……?

荻野みどり 1982年生まれ。福岡県出身。2011年に出産したのをきっかけに、食材を厳選したお菓子ブランド「ブラウンシュガーファースト」を立ち上げる。その後、有機エキストラバージンココナッツオイルの輸入販売を開始し、美容や健康におけるココナッツオイルブームを巻き起こす。
ココナッツオイルとの運命の出会い

「美味しくて心豊かな食を未来の社会につなぐことが、私のやりたいこと」と語る荻野みどりさん

ココナッツオイルとの運命の出会い

数えきれないほどの転職を繰り返した末、どうせなら「誰かの幸せにつながる仕事がしたい」と望んでいる自分に気づいた荻野みどりさん。そこで娘さんの出産を機に、“美味しい”と“安心”が両立するお菓子の販売を開始。嬉しそうに買ってくれるお客さんたちを見て、「やっとやりたいことを見つけた!」と感じられたという。その後、様々なレシピを考えコツコツと販売を続けていたのだが、2012年に転機が訪れる。

「市場にバター不足が起こって、一人一個までしか買えなくなったんです。もともとバターは美味しくて大好きだけど、健康のためには摂り過ぎは良くないという思いがあったので、これを機に、バターに代わる美味しくて安心な油を探すことに。そこで出会ったのがココナッツオイルでした。トランス脂肪酸を一切含まないし、免疫力を高める成分も含まれているらしい。しかもココナッツオイルを使ったお菓子は美味しい! 何て良い食材なんだろうと興味を持つようになったんです」

そこで荻野さんは、みずから原産国であるフィリピンやタイに向かい、ココナッツオイルを輸入。日本で販売を始めたところ、その効能は美容や健康に敏感な人たちにあっという間に知れ渡り、空前のココナッツオイルブームが起こったのだ。

「フィリピンに行ってみると、働きたくても仕事がないという人がものすごく多く、貧困を目の当たりにしました。それで、ココナッツオイルを日本で売ることでフィリピンの雇用事情を活性化させたい、と思うようになりました。とは言っても決して慈善活動にするつもりはなくて、雇用も生まれ、日本の皆はより健康になるとしたら…なんて素晴らしい!私の商売がそこにつながっていた方が嬉しいな、という自己満足(笑)。自分がワクワクすることを追求していたら、結果的に関係する人たちにつながっていった、というわけです。でもこのサイクルこそがオーガニックだなと思えて、仕事にはすごく充実を感じていましたね」
新たに立ちはだかった女性ならではの壁

ココナッツオイルを入れて飲むコーヒーを、より良くしたい。と力を入れているのがオーガニックコーヒーの販売

新たに立ちはだかった女性ならではの壁

ところが……、順風満帆だった荻野さんの前に想定外の壁が立ちはだかる。それは、かつて自分が嫌で逃げ出したはずの、保守的な女性観。仕事が忙しくなるにつれ、「子供に寂しい思いをさせているんじゃないか」と苦しみ始めるのだ。

「親が望む生き方のレールから外れたとはいえ、生まれ育った環境から、私の中にも昔ながらの母親像みたいなものがインストールされていたんでしょうね。娘が生まれてから、『家庭に入って子供第一に生きるべき』と感じて苦しくなっていたんです。実際、『子供を犠牲にしてまでやることなの?』といったことも言われましたし。きっと、同じような葛藤を抱えている方は多いんじゃないでしょうか。仕事をしているいないに関わらず、女性って真面目で、すべてのことを全力でこなそうとしますよね。それで何か一つできないと、能力が足りないと自分を責める……。でも私からすると、そんなの不可能です。できることに限界はある、そう認めたほうがいいと思ったんです」

数年間のモヤモヤ期間を経て、「これではいけない」と荻野さんがおこなったのが“役割の棚卸し”作業だった。

「まず自分の役割を一つずつ紙に書き出したんです。母、妻、嫁、女性、会社員、子供……と。そこから、それぞれ“求められていること”と“現状”、“本当はどうしたいか”についても書き出しました。そうすると、うまくいってないことが何かきちんと整理できたんです。さらにそこから、役割に優先順位をつけ、後回しにするもの、捨ててもいいものについて考えていきました。そうしたら、“妻”という役割は後回しにしてもいいな、ということに気づいて……」
悩んだ末に荻野さんが卸した役割とは……

現在は有機エキストラバージンココナッツオイル以外に、多くのオーガニック食品を取り扱っている

悩んだ末に荻野さんが卸した役割とは……

結果、荻野さんは娘さんが5歳のときに離婚。しかし、自分の気持ちをきちんと整理し話し合ったうえでの決断だったため、夫とは今も協力し合って娘さんを育てる良い関係だという。

「子供ができるまでは、夫とはお互いにリスペクトし合って成長していく、という関係性だったんですね。でも気づけば、夫と同じ夢を見ていた自分ではなくなっていた。私はどうしても『夫は私に内助の功を期待している』と感じてしまって。でも一人の女性としてワクワクしながら生きたい!と葛藤していたんです。長い年月の間に、お互いのステージが変わっていたんですよね。その違いを無理矢理すり合わせるより、今は妻の役割を降りたほうが、お互いに“父”と“母”の役割を全うできると思って。そのことを夫に伝えたら、夫も理解してくれました。おかげで今も元夫を尊敬できているし、子育ても協力し合ってやっています。でも役割を切り分けられずにいたら、よく分からないまま『夫は何かムカつく存在』となって口論を繰り返していたと思うんですよね……」

きちんと役割を整理して、たとえば「自分にとって今は“妻”の役割が大事だ」と優先順位をつけられていたなら、バリバリ働く女性を見てもモヤモヤ感を覚えないかもしれない。すべてを同時進行で完璧にこなすのは無理。だから後回しにするものや捨てるものがあってもいいのかもしれない。大切なのは、なんとなくそのままでいるのではなく、役割の整理を通して自分自身で大切にしたい役割を理解すること。

「この棚卸し作業は本当にオススメです。それも定期的に。人生の環境はこくこくと変わりますから、それに応じて優先順位も変わっていくもの。放置していると、すぐにこんがらがってしまうと思うんですよ」

「何か気持ち悪い」とすべての物を捨てる!

そう語るように、実は荻野さん、最近もまたこの棚卸し作業をおこない、何と家中のものをほぼすべて捨ててしまったという!

「会社が大きくなって売上げも増えていくにつれ、何だか分からないけど絵を買っちゃったり、大きなソファを買っちゃったり。それでソファが入らないから家も引っ越して……と、物に支配される日々になっていたんです。その状態が何か気持ち悪くて、『よし、全部捨てよう!』と。それでまず、家を解約しちゃったんです。リミットを決めないとズルズル手放せないと思ったから。その後、物はすべて捨てたり売ったりして、お気に入りのマグカップだけ持って姉の部屋に転がり込みました。姉にすれば迷惑な話ですよね(笑)」

実は荻野さん、この“リセット前科”は初めてではない。やりたいことを探して様々な仕事を渡り歩いていた23歳のときに、一度経験済みなのだという。

「転職を繰り返すあまり、自分が何をやりたいのか分からなくなって、『私が幸せでいる状態とは?』と根本的なことを徹底的に考えてみたんです。そうすると、私は短く働き、のんびり本を読む時間があって、たまに区立のジムで運動できたらそれでいい人間だ、ということに気づいたんですよね。つまり月に10万円もあれば生きていけるということ。当時も、それで物を一回すべて捨てたんですけど、その作業をもう一回やったというわけです。私の幸せは猛烈に働いて稼ぐことじゃないと分かっていたから、今回もすんなりいらないものを捨てることができたんだと思います」
今は捨てても諦めたわけじゃない

都内のオフィスにて。キッチンスペースも併設

今は捨てても諦めたわけじゃない

持ち物に関してだけではない。ついつい大きくしてしまいがちな会社のほうも、徹底的に棚卸し作業をおこなっている。

「オフィスも広くなって社員も増えて、これから先、年商10億20億の会社を目指していくことも夢ではないと思うんです。でもそれって、世間体はカッコいいかもしれないけど、私がやりたかったことじゃない。私がやりたいのは、安心で美味しい心を豊かにする食文化を未来の社会につないでいくこと。優先順位はそこにあるので、社員数とか売上げとかいった数字に捉われちゃいけないと思って。だから私は社員が独立したいと言ったら業務委託という形をとって応援しますし、競合する仕事も遠慮せずやっていいと伝えています。それは結果的に、私のやりたかった『美味しくて心豊かな食を未来の社会につなぐ』という目標を叶えることになりますから」

家事に子育てに仕事に、あるいは親戚付き合いにママ友付き合いにとやることが溢れ返っている人は、荻野さん流“役割の棚卸し”をやってみてはいかがだろうか? そうして、“捨てるもの”、“後回しにするもの”、あるいは“手を抜くもの”などと自分の中で割り切ることができれば、精神的にも体力的にもかなりラクになれるかもしれない。

「でも決して、諦める必要はないと思うんです。一時的に捨てたり後回しにしたりするだけ。私の場合は考えに考え抜いた末、“妻”と“嫁”という役割は一旦は捨てましたが、これからは120歳まで生きることも当たり前になる時代。時間はいっぱいあるので、また結婚したいと思っています。大学を出ていないという学歴コンプレックスもありましたが、それも80歳になったら入り直して天文学を学ぼうと考えています。今全部やるのは無理でも、諦めることはしたくない。もしできなかったとしても、『来世でやる!』と思って死にます(笑)」

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