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【インタビュー】寺島しのぶを変えた夫の言葉とは? [FRaU]

2018年05月04日(金) 11時00分配信

Photo:Akina Okada 

舞台「ヘッダ・ガブラー」で、女優なら誰もが一度は演じてみたいと願う悪魔的なヒロイン・ヘッダを演じる寺島さん。ヨーロッパの風土が生み出す、わかりにくいキャラクターに惹かれる理由は、結婚相手から受けた影響も多々あるようで……。
君と一緒にいてもちっとも面白くないってしょっちゅう彼に言われました

Photo:Akina Okada 

君と一緒にいてもちっとも面白くないってしょっちゅう彼に言われました

――寺島さんが、今のご主人と結婚したのが11年前。最初から、お互いの感性に惹かれ合ったんですか?

寺島:全然(笑)! 付き合い始めの頃は、しょっちゅう言われましたよ。「君と一緒にいてもウンウン頷くだけで、少しも面白くない。何かないの? 君の意見は?」って(苦笑)。私は正直、彼の意見を聞いて「違うな」って思っても、面倒くさいから、「そうだね」って相づちを打っちゃってたんです。

そもそも、ヨーロッパで生まれ育った彼は、文化に対する知識量が桁違いで、小さい頃から自分の意見を主張するように育てられているから、弁が立つ。だから私は、最初の頃はちょっと萎縮しちゃったところもあったし、どうせ言い負かされるんだから面倒だと思って、自分の意見を主張はしなかった。でも、それじゃだめなんです。自分の意見をはっきり持って、それをちゃんと言葉で主張できないと、人間として認めてもらえない。

それに、彼は自分の意見は主張するけれど、それで相手を納得させたいわけじゃなくて、相手の意見も聞きたがるんです。だから、私が何かトンチンカンなことを言っても、否定したりしない。相手の考えをちゃんと尊重する。そこは、日本の男性にはあまり見られない感性の豊かさだと思いました。
――フランス人にとっては、経済的にだけでなく、精神、思想、感性もすべて自立していることが、 “人間の条件” なのかもしれないですね。島国で協調性を持つように育てられた日本人が、一緒に生きていくのは大変そうです。

寺島:そこは、本当に鍛えられました。文化以外にも、歴史のことも知らなきゃいけないし、興味や感心を持つ対象もグンと広がりました。その分疲弊や消耗も激しいですが(笑)。でも、徐々に知識をつけて、その上でわかりにくいものや、余白の部分をあれこれ想像することで、精神の豊かさのようなものは、確実に獲得できるんです。

映画だって舞台だって、「わからなかった」で片付けるのではなく、あれはこうじゃないか、いやそこは違うだろうって、一つの作品についての意見を交わし合うことができたら、観る側も成長できるでしょう? 実際、そういうお客さんが増えれば、演じる側も成長すると思うんです。
――なるほど。どんな豊かな文化も、その栄養を十分に吸収できるかどうかは、受け手次第ですからね。見る目が育てられれば、演じる側ももっと磨かれる。だから、ヨーロッパの文化は成熟しているんでしょう。ただ、仕事もこれだけ大変なのに、日常生活の中で、人間としての感性も磨いていかないといけないなんて……。休む暇がないですね。

寺島:本当に(苦笑)。消耗し、疲弊していく一方です。充電したり、インプットしたりっていう余裕がまったくない。だから今は毎日、あっという間に夜が来て、あっという間に一日が終わっている感じです。ただ、子供がまだ手のかかる時期ということもあるので、今が一番大変なのかな、と思います。今回の舞台だって、こんなに立て続けにやるのは無茶だとも思ったんですけど、やっぱり、やりたかったんです。
――仕事のオファーを受けるとき、何か基準にしていることはあるんですか?

寺島:すべて直感です。ここまで、本当に直感だけで来た人間なんです。直感と、タイミング。だから、「やりたい!」って思ったら、それに逆らってはいけないと思っちゃうんです。結婚も、作品選びもすべてそうでした。ただ、今振り返ると、あの話がもし2ヵ月あとに来てたらできなかったな、ってこともよくありました。何一つ後悔はしていないです。

4月末に公開される「オー・ルーシー!」っていう映画はロサンゼルスで撮影したんですが、子供を同行させられたので、海外ロケが実現したんです。ちょうどそのとき、夫の娘が日本に1年滞在していたので、彼女も一緒にロスに連れて行って、子供の面倒をみてもらいました。彼女がいなかったら、私も撮影に集中できませんでした。
――それにしても、退屈のない毎日です。

寺島:そう。そこは、毎日退屈ばかりしているヘッダとは大違い(笑)。

PROFILE

寺島しのぶ Shinobu Terajima
1972年生まれ。京都市出身。青山学院大学在学中の1992年、文学座に入団。2003年公開の映画「赤目四十八瀧心中未遂事件」で第27回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、「ヴァイブレータ」で東京国際映画祭女優賞を受賞。2007年、フランス人アートディレクターと結婚。2012年に一男をもうける。

2010年「キャタピラー」で世界三大映画祭の一つベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)受賞。主演映画「オー・ルーシー!」は、4月28日ユーロスペース、テアトル新宿ほかにてロードショー。2019年2月には、パリのコリーヌ劇場で舞台「海辺のカフカ」が上演予定。

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