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羽生結弦オリンピック二連覇!【海外の反応も凄かった】強さと美しさの秘密を深堀り [with]

2018年02月24日(土) 12時00分配信

写真:AFP/アフロ

男子フィギュアスケート、羽生結弦選手が66年ぶりのオリンピック二連覇を達成! オリンピック史に残る、その偉業! もちろんそのスケーティングは日本のみならず世界各国でも賞賛されています。いったい何が凄かったのか? 勝負の分かれ目をショートプログラム、フリープログラムを通してちょっぴり詳しく振り返ってみます。

壮絶なプレッシャーの中、首位をとったショートプログラム!

2月16日に行われたショートプログラム。羽生選手は111.68点という高得点で首位にたちました。これは自身がもつ世界最高記録でもある112.72点に限りなく迫る高得点。羽生選手が右足の怪我のためスケートリンクからしばらくの間、離れていたことは周知の通り。つまり決して万全な状態とは言えない上、オリンピックという大舞台のプレッシャーがかかる中で得たポイントと考えると、改めてとんでもない点数であったことがわかります。まさに、オリンピック二連覇に大きく近づいた瞬間でした。

今のベストは何か!そこには明確な戦略があった!?

羽生結弦選手と、今回銅メダルを獲得したスペインのハビエル・フェルナンデス選手はブライアン・オーサーというコーチの元で腕を磨きあってきた同門。オーサーコーチは明確な指導と戦略でキム・ヨナさんなどのオリンピックメダリストを生んできた名将です。
そのオーサーの重要な戦略の一つと言われるのが、演技全体をミスなくしっかりとまとめ、質の高い技術でGOEの加点をとるというもの。
フィギュアスケートのジャンプは、同じ回転数のジャンプであっても、その基礎点と言われるものは異なり、さらにそこに出来栄えに左右されるGOEという加減点がつきます。オーサーコーチは、その著書「チーム・ブライアン 300点伝説(講談社)」の中で、いかに演技全体をひとつのパッケージとしてクリーンにまとめるか?という事を重要視していると語っています。

写真:エンリコ/アフロスポーツ


つまり、それはどれだけ難易度の高いジャンプを跳んだとしても、その質が低くGOEで減点されるようであれば、もっというと転倒するようなことがあってはいけないという考え方。
とはいえ、4回転ジャンプ全盛の時代に3回転ジャンプだけで金メダルを狙うというのが難しい状況であるのも、また確か。そこでいかに質の良い4回転ジャンプを演技に組み込み、その他のスピンやステップなどの要素もきちんと揃え、5コンポーネンツと呼ばれる演技構成点をしっかり取り、きれいに演技全体をまとめるか! つまり「4回転を成功させながら、演技も最上級のものを行うか」そのトータルパッケージが重要であると言っているのです。



今回のショートプログラムで羽生選手がみせた演技はまさにそれでした! 怪我の影響があり必ずしも万全ではなかったと思われる右足。(※これは「右足に感謝」というフリープログラム後の本人コメントからも察することができます)
今回はその影響を出来る限り減らすため、右足に大きな負担をともなう最高難度の4回転ルッツはあえて避けていたと思われます。

高度な戦略と技術に基づく完璧な演技

写真:YUTAKA/アフロスポーツ

高度な戦略と技術に基づく完璧な演技


その結果、今回のショートプログラムでは4回転サルコウ、トリプルアクセル、4回転トウループ-3回転トウループという、コンビネーションを含む3つのジャンプを選択しました。それぞれの基礎点は10.50点、9.35点(演技後半のため1.1倍)、16.06点(演技後半のため1.1倍)。そして、出来栄えを評価するGOEはそれぞれ2.71点、3.00点(※これは満点!)、2.57点という、特筆すべき高い点数を獲得。最終的に3つのジャンプの合計点だけで44.19点という点数を叩き出したのです。




これは最も高難度のジャンプ4回転ルッツを含むジャンプ構成で挑み、そして成功させた金博洋選手の4回転ルッツ-3回転トウループ、4回転トウループ、トリプルアクセルのGOEを含む合計点42.69点をも上回る点数! これこそが羽生選手の跳ぶジャンプの質の高さ、ジャンプ直前のつなぎや入り方など細かい技術の秀逸さを物語っている証拠と言えます。




もちろん、フィギュアスケートはジャンプのみならず様々な要素で争う競技。言わずもがな絶対王者羽生選手のその他の技術も抜きん出たものがあります。
当然のように、ジャンプ以外のスピンやステップなどのGOEを含む点数も18.99点のトップ。それらを合わせた技術点はぶっちぎりの63.18点。スケーティングや音楽との調和などをはかる演技構成点ももちろん高いので、それを合わせた最終的な点数でも111.68点と他を寄せ付けず首位となったのでした!

様々な選択肢から選んだ、オリンピック二連覇へのフリープログラムとは?


そして17日に行われたフリープログラム。フィギュアスケートはショートプログラムとフリープログラムの合計点で争う競技であるため、どちらか一方が抜きん出た点数であっても勝利を簡単につかむことはできません。この双方をきちんと揃えてくることが何よりも大事。2日間にわたる間、集中力を維持し、このオリンピックという大舞台にピークを持ってくることは並大抵のことではありません。



それを一番わかっている者こそオリンピックメダリストを多数輩出する名門オーサーコーチ率いるチーム・ブライアン、そして羽生選手! ここでも重要な戦略をとったようです。



今回のフリープログラムでは、羽生選手は自身のもつ4回転ジャンプ4種類の中からトウループ、サルコウを各2本、計4本の4回転ジャンプを構成に組み込んできました。
(ちなみに同門の銅メダルを獲得したハビエル・フェルナンデス選手も4回転は3本。※残念ながら1本は2回転になりました)
これは前日のショートプログラムで1位、2位だった両選手がこのフリープログラムで目指すべき演技は自分のプログラムをいかにミスなくクリーンにまとめ上げるか!それさえきちんと出来れば勝利は自ずとやってくる! そこが一番重要である。という戦略に基づいたジャンプ構成だったのではないかと思われます。



重ねての言及になりますが、羽生選手のジャンプは現役選手の中でも最も高いGOEを獲得出来る質の高さを持ったものになります。きちんと決めれば、当然高い点数を得ることができるということがわかりきっているのです。
ゆえに最高難度の4回転ルッツを今回のプログラムにあえて組み込む必要はなかったと言えます。
実際、羽生選手が演技前半に行った4回転サルコウと4回転トウループはそれぞれGOEで最高の評価を得て、満点の3点という加点を取り、目論見通りの結果になりました。

最大のピンチをリカバーした絶対王者の強い精神力と技術


しかしながら、実はすべて予定通りだったというわけではありません。
当初は2つ目のコンビネーションジャンプを4回転トウループ−1回転ループ−3回転サルコウにする予定だった羽生選手。ところが、4回転トウループでタイミングが合わず単発の4回転トウループジャンプになってしまったのです。
それはすでに一度4回転トウループを跳んでいた羽生選手にとっては、「同じ種類の3回転、もしくは4回転のジャンプを跳べるのは2回まで。ただし、その時は片方を必ずコンビネーションにしなければならない」というルールに抵触するもの。また、そうなった場合、基礎点が70%になってしまうのです!
つまり、高得点を獲得出来るコンビネーションジャンプの機会を一つ失っただけではなく、減点もあったという最大のピンチでした。



ところが、そこは絶対王者! 続くトリプルアクセル−2回転トウループのコンビネーションジャンプを急遽、トリプルアクセル−1回転ループ−3回転サルコウに変えてリカバーしてきたのでした。もとより羽生選手くらいのトップ選手では、このような状況になった場合のリカバリーを持っているとはいえ、これをオリンピックという大舞台でやってのけるのは強靭な精神力、そして度重なる練習によってのみ可能な高い技術がなければ、簡単には成し遂げられるものではありません。羽生結弦選手が絶対王者であることを見せつけてくれた瞬間でした。


ショートよりおよそ1分50秒長いフリープログラムだからこそスタミナが鍵を握る!

フリープログラムはショートプログラムよりおよそ1分50秒も演技時間が長いため、そこに入れる要素もおよそ倍の数になります(ショートプログラムは7個に対して、フリープログラムは13個のエレメンツ)

つまり、昨年の11月に怪我をして、およそ二ヶ月!もの間、練習ができなかったと言われる羽生選手。常識的に考えて、ショートを滑る以上に大きな負担のかかるフリープログラムを完璧に滑り終えるということは大きな壁の一つだったと言えます。
ところが、そこは羽生結弦! 本人も記者会見で語っていた「リンクに立てないときは陸上で練習しイメージを固めた。スケートができなかったからこそ、できたことも考えられたこともある。作戦が大事だし、たくさんの選択肢がある。いずれにしてもクリーンに滑れば絶対に勝てると思う。体力に関しては不安な面も…あと氷上にのっていなかったのでスケートの感覚は不安だった。ただ一ヶ月滑って、オリンピックに出られるって自信もできたし、今ここにいるのだから問題ない。ただひたすらやるべきこと、これ以上ないことをしきたので、何も不安要素はない。この場所でやれることをやりたい」という強い言葉通り、見ている者の不安をよそに見事にフリープログラムを演じ切ったのです。ここから、リンクに立てないときは立てないなりに想像を絶する努力と準備を重ねてきたであろうことが読み取れます。

心技体すべてそろった絶対王者だからこそ成し遂げられた五輪二連覇の偉業!


改めて66年もの間、誰も成し遂げられなかったオリンピック二連覇という偉業。
これは心技体すべてを兼ね備えた羽生結弦選手という唯一無二の存在だからこそ、なし遂げられたものだったと言えるでしょう!



「心」


大舞台直前の怪我によりリンクを離れるという状況の中で迎えた、大きなプレッシャーのかかるオリンピックでも決してブレなかった強い精神力。




「技」


単純に基礎点だけでは測れない、上質なジャンプをはじめとしたスピン、ステップ、つなぎ。また、振り付け、スケーティングなどの高い技術力。




「体」


そして、羽生選手の憧れでもあるエフゲニー・プルシェンコさんをはじめ数々の名スケーターを襲ってきた、フィギュアスケートという競技に潜む魔物【怪我】に負けなかった屈強な身体。




2018年2月17日、平昌オリンピックのリンクに降臨した羽生結弦という神々しい存在は、こうして世界中の人々の記憶に残り、決して忘れらない存在になったのです。

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