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「おっぱい銭湯」はじめました。 [おとなスタイル]

2018年02月04日(日) 14時00分配信

NPO法人ビーシーアンドミー 古田智子さん

今までできなかったことが、できるようになる。
知らなかったことを知る、そして理解する――。
何歳になっても「進化」し続ける人は、オーラが違います。体力や時間がなければ、経験と知恵と度胸でカバーして。苦労もするけれど、そのぶん感動も大きくなる!
そんなおとなの「ヒトハナ」物語、教えてもらいました。

49歳、乳がんがきっかけに。 「おっぱい銭湯」はじめました。

「49歳で乳がんになる前は、起業したばかりで、“仕事サイボーグ”と言われるほど働いてました。病気にならなかったら、変われなかったかもしれません」
古田智子さんは、社長を務める本業のビジネスと並行し、51歳のときにNPO法人ビーシーアンドミーを設立。乳がんに関わる社会的な課題を解決しようと活動を広げている。例えば「おっぱい銭湯」。毎年10月は乳がんの知識を啓発する「ピンクリボン月間」だが、古田さんは2016年から、早期発見をアピールするイベントを、なんと銭湯で開催。洗い場に自己触診の方法を説明した防水ポスターを貼ったり、しこりを体感できる乳房の模型などを用意したり。その発想は、自身の乳がん体験がヒントになったという。

「仕事の癒やしに、ほとんど毎日、銭湯に通っていたんです。ある日、体を洗っているときに偶然、しこりに気づいて。翌日、たまたま時間ができて病院に行き、乳がんが発見できました。告知のとき、思わず『良かった!』と言ってお医者様に驚かれたんです。だって、そのタイミングを逃したら、1年は放っておいたと思いますから」

初期に見つかれば怖がる必要はない病であること、カミングアウトせず通常の生活をしながら治療する人が圧倒的に多いことも、自ら調べて納得した。

「私も治療と仕事を両立させたんですが、意外にスムーズにできました。ただ、あるお客様に病気のことを話したら、『いつ死ぬかわからない』と、即、契約解除になったことも。職場に知られた途端クビになったり、キャリアを絶たれた人が多いとも知りました。死に直結する病ではないし、治療しながら働けるのに。乳がんにかかってもそれぞれに合った働き方で、自分らしく生きられるような社会にしたいと、NPO法人を立ち上げたんです」

失ったものを嘆くのでなく手にあるものを生かす

乳がんに対する社会の偏見を変えたい。そんな思いから、抗がん剤治療で毛髪を失ったときに、古田さんはアクションを起こした。カツラをつけず、どんどん街に繰り出したのだ。

「髪を失うことで精神的に落ち込む女性が多いので、大丈夫、普通に生活できるんだと証明したかったんです。禿げた姿をプロに撮ってもらってFacebookにアップしたら、フォロワーが増えました(笑)。ただ、どうせ髪がないからと石鹸で頭を洗っていたら、生え始めた髪がゴワゴワの直毛で、パンクな状態に! これはいかんと、抗がん剤治療中の方向けに、スキンヘッドに良いシャンプーを探して、NPOで販売してみたら、たくさんの方が喜んでくださった。こんなに需要があったのかと驚きました。がんになっても、小さな工夫でプライベートも仕事も、生活の質は保てるんです」

乳がんへの理解を深めると同時に、行政などと社会の仕組みに落とし込むことも古田さんの目標だ。国や地方公共団体とのビジネスを専門にしてきたというキャリアが、そこで生かされる。

「今まで経験して得たものがいろいろある、この年齢だからできることだと思っています。病気になったことで、社会との関わりを見つめ直し、自分なりの使命をこうして見つけられた。人それぞれ転機のきっかけはありますが、私はそれが乳がんだったんです」

活動を応援してくれる人との縁など、おとなになって得た財産も貴重だ。

「失ったものを嘆くのでなく、手にあるものを生かしたい。それで世の中の役に立てるんですから、今がいちばん幸せです。これからもっと、私は幸せになるとも思ってますよ(笑)」

東京・高円寺の小杉湯

東京・高円寺の小杉湯は画期的なイベントを開催する銭湯として有名。
古田さんがしこりを見つけた場所でもあり、「おっぱい銭湯」の第1号に。2017年10月のイベント開催時には洗い場の自己触診ポスターとともに、お湯をピンク色にする演出も。2017年の「おっぱい銭湯」は、15軒の銭湯が参加。
■Profile

古田智子さん
ふるたともこ
1965年東京都生まれ。国・地方公共団体を事業領域としたシンクタンクなどを経て、2013年株式会社LGブレイクスルーを起業し、官公庁ビジネスソリューション事業を展開。乳がんの経験から’16年NPO法人ビーシーアンドミー設立。乳がんライフを心地よくすごすためのウェブマガジン「Breast Cancer & Me」では、様々な役に立つ情報を常時更新中。

 
撮影/江森康之

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