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新鮮な驚きに出会える! 舞台『プルートゥ』森山未來インタビュー [おとなスタイル]

2018年01月06日(土) 10時00分配信

“言葉も身体も等価と捉えて表現する”

photograph by Norihiko Okimura

“言葉も身体も等価と捉えて表現する”

映画『怒り』やドラマ『みをつくし料理帖』など、おとなも楽しめる質実な映像作品で活躍しながら、舞台『髑髏城の七人』Season鳥では大劇場を沸かせていた、森山未來さん。『髑髏城~』では、彼の凄絶な太刀さばきと美しい身のこなしに、多くの人が心奪われた。
ダンサーとして多数のダンス作品に参加しているだけあり、彼の「身体表現」はさすが。舞台好きならぜひ一度は観てほしいもの。おあつらえ向きに舞台『プルートゥ』が年明けに始まる。漫画『PLUTO』(小学館刊)を原作に、現代の舞台芸術を牽引する振付家シディ・ラルビ・シェルカウイが演出する作品だ。
2015年の上演では、ダンス、音楽、映像など演劇の枠を超えた多様な表現が物語を彩っていた。
「僕は『プルートゥ』の前に、ラルビの『テ ヅカTeZukA』というダンス作品に携わらせてもらったんです。手塚治虫の世界を表現したのですが、たとえば『鉄腕アトム』のこのエピソードをやろうという作り方ではなく、手塚の世界をどう身体的に表現できるかを思いつくままに羅列し、感覚でつないでいった。その作り方にラルビの柔らかさとロジカルさを感じました。『プルートゥ』で初めて彼が演劇をやることになって、台本という設計図があるとアプローチはどう変わるのかと思いましたが、『プルートゥ』でも、ここはセリフで表現しよう、ここは身体で、映像で、ととにかく自由。言葉も身体も音楽も美術も全て等価と考えて作っているんです」

それは見たことのない表現に溢れていた。たとえばロボットである主人公アトムには、〈マニピュレーター〉という役割のダンサーたちが張り付き、アトムの内部で起こっている反応を可視化。スペクタクルな戦闘シーンは、あえて生の身体とアナログな仕掛けで見せてくれた。
「ちょっと“おもちゃ箱をひっくり返した感”があったかなとも思いますが(笑)、ラルビは原作を信じていたんですよね。どんな表現を入れても、このストーリーがあれば大丈夫、という愛情を感じていました」

そう、ストーリー的にも見応えは十分だった。その中で、森山さんは見事なまでにアトムになって、ロボットが本来持たないはずの愛や憎しみを増幅させ、物語の主題を観客へ饒舌に語りかけてきた。
ここ最近、言葉と身体表現、美術や音楽が渾然一体となった作品が増えているようだが、森山さんはその先陣を切っている舞台人では?
「いやいや(笑)、もっと前からありましたよ。ただ、演劇の世界でも“ここにジャズダンスを入れます”というようなことではなく、身体の可能性を理解してアプローチする役者さんが増えている気はしますね。そういう環境だからこそ、できることがあるなとは思っています」

今年の初め、森山さんは劇作家・演出家の岩井秀人さん、ミュージシャンの前野健太さんとともに、『なむはむだはむ』という作品をつくった。言葉・音楽・身体をそれぞれ専門とする3人で、子どもの発想を演劇にしてみようという試みだった。

「岩井さんは“言葉の人”なので、最初、僕の身体からのアプローチが謎! と言っていました(笑)。でもこの感覚を信じてくれて、“言葉”を優先するのではなく、対等に作ることができたんです。『プルートゥ』も前回より、ダンサーと俳優の役割が混ざるかもしれません。ウラン役の土屋太鳳さんは“動ける”人ですから、ラルビはそのポテンシャルをどう活かすか考えているんじゃないかな。前回はアトムとウランが踊るシーンはなかったから、その辺から変わっていくのかもしれません」

新鮮な驚きに出会えそうな『プルートゥ』。新しい刺激は、おとなの頭も心も柔らかくほぐしてくれそう。

ところで、日々、真摯に身体に向き合っている森山さんは、歳を重ねることをどう考えているのだろう。
「バレエやストリートダンスなどに関しては、技術的にはいつか身体的な限界が来ます。でも踊るということを大きく捉えると、その時の身体だからこそ魅せられる表現がある。たとえば“シワ”ってカッコイイ。僕は若く見せようという意識がありません。40歳なら40歳、50歳なら50歳として魅力的じゃないと意味がない。男性と女性では違うかもしれないけど、若くいようとするとどこかで破綻するので、年齢に従順な人のほうが美しいなと僕は思います」
鉄腕アトム「地上最大のロボット」より『プルートゥ PLUTO』

(C)原作 : 『PLUTO』(浦沢直樹 × 手塚治虫 長崎尚志プロデュース 監修/手塚眞 協力/手塚プロダクション 小学館)

鉄腕アトム「地上最大のロボット」より『プルートゥ PLUTO』

人間とロボットが共存する時代。高性能ロボットが次々と破壊される事件が起こる。アトムは刑事ロボットのゲジヒトとともに、その謎を追い、核心に迫っていく。2015年に舞台化を実現、更に進化し、世界へ!
演出・振付/シディ・ラルビ・シェルカウイ 出演/森山未來、土屋太鳳、大東駿介、吉見一豊、吹越満、柄本明ほか。
2018年1月6日(土)~28日(日)Bunkamuraシアターコクーン、2月欧州ツアー、3月大阪公演あり
■Profile

俳優・ダンサー 森山未來
もりやまみらい/舞台・映画・ドラマのほか、ダンス作品でも活躍。2013年、インバル・ピント&アヴシャロム・ポラック ダンスカンパニーを拠点に欧州諸国で活動。’17年の出演舞台に『髑髏城の七人』Season鳥、『なむはむだはむ』など。
まだまだある! この冬おすすめの厳選ステージ3本

撮影/ケイ オガタ

まだまだある! この冬おすすめの厳選ステージ3本

『近松心中物語』
堤真一・宮沢りえが、激しい愛に身を焦がす。蜷川幸雄演出で話題を呼び伝説となった名作に、いのうえひでのりが新演出で挑む。
2018年1月10日(水)~2月18日(日)
東京・新国立劇場 中劇場

※大阪公演あり

『黒蜥蜴』
“黒蜥蜴”に中谷美紀、明智小五郎に井上芳雄が扮するスリリングな娯楽活劇。江戸川乱歩の傑作を戯曲化、演出はデヴィッド・ルヴォー。
2018年1月9日(火)~28日(日)
東京・日生劇場

※埼玉、大阪、上海公演あり

『ムサシ』
藤原竜也が宮本武蔵を演じた、世界絶賛のスラップスティック・コメディを再演。溝端淳平、鈴木杏、六平直政、吉田鋼太郎、白石加代子らが再集結。
2018年2月11日(日・祝)~25日(日)
東京・Bunkamura シアターコクーン

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