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私が読みたい本「女優・酒井若菜の一目惚れした装丁本」 [FRaU]

2017年11月05日(日) 19時00分配信

本は読みたいけど、自分で選ぶのは難しい……。そういうときこそ、人に聞いちゃいましょう。

今回は、女優・酒井若菜さんが、これまでの人生で出会った本と、その魅力を紹介してくれます。
本を読む人……

WAKANA SAKAI

本を読む人……

酒井若菜


PLOFILE
1980年栃木県生まれ、1996年デビュー。映画やテレビを中心に女優として活動しながら、2008年に小説『こぼれる』(春日出版)を発表し作家デビュー。自ら編集構成を行った対談集『酒井若菜と8人の男たち』(キノブックス)など、これまでに3冊の本を出版している。

クラッチバッグのように 持ち歩きたい本

本を持って出かけるときに、鞄に入れずにむき出しで持つクセがあるんです。特に装丁が素敵な本は、スタイリングのポイントにもなるクラッチバッグのような存在。私にとって本のデザインはすごく重要。書店で一目惚れして買うことも少なくありません。
本を持って出かけるときに、鞄に入れずにむき出しで持つクセがあるんです。特に装丁が

『忘れてきた花束。』

本を持って出かけるときに、鞄に入れずにむき出しで持つクセがあるんです。特に装丁が

糸井重里さんの言葉を断章形式で収めた「小さいことばシリーズ」を集めているんですが、毎回装画が素敵なんです。

最新作の『忘れてきた花束。』(東京糸井重里事務所)では、ミロコマチコさんの鮮やかな絵が手触りのいい紙にのせられて、紙の本でしかできないことをやりきっています。

実は私にとっての “理想の男性” でもある糸井重里さん。日常のことも非日常についても、同じ優しさ、同じテンションで語られる言葉が、湿度が低くて心地いい。このシリーズは短いものは一行、長くても数ページの短文ばかりなので、ふと取り出しては少しずつ読んでいます。
発想力はまさに無限大!

『お日さま お月さま お星さま』

発想力はまさに無限大!

文学界の巨匠カート・ヴォネガットと、デザイン界の巨匠アイヴァン・チャマイエフが一緒に作ったのが『お日さま お月さま お星さま』(国書刊行会)。デザインも文体もとてもシンプルで、無神論者のヴォネガットがクリスマスを題材にした絵本を作っている、という組み合わせが面白い一冊です。

ヴォネガットの作品は全て読んでいるのですが、この人の発想力はまさに無限大! この絵本が出版されたときも、嬉しくて飛びつくように買って読みました。これは大判サイズでビッグクラッチ気分といった趣です。
読むタイミングで 寄り添う登場人物が変わっていく作品

『星の王子さま』

読むタイミングで 寄り添う登場人物が変わっていく作品

サン=テグジュペリの『星の王子さま』(岩波書店)は、さまざまな版がありますが、一目でこの作品だと分かるイラストの力、装丁の力を感じさせてくれます。

初めて読んだ小学生のときは、語り手である〈ぼく〉の幼少期のエピソードに感情移入して、そうそう、どうして大人は分かってくれないんだろう、と思っていました。でも、大人になってから改めて読むと、友だちのように思えていた〈王子さま〉がすごく幼く見えて、その幼さが怖いものに思えてきた。

かれこれ数十回は読み返している作品ですが、読むタイミングによって登場人物の誰に寄り添うかが変わり、視点が移っていく。40代、50代と年齢を重ねて読んだら、また違うものが見えてきそうで、それもまた楽しみです。

ファンの方からこの作品を贈っていただくことも多くて、翻訳者が違うもの、飛び出す絵本など、いろんなバージョンを持っています。

本を贈ったり贈られたりすることが多く、おすすめしたい本は、貸さずに買ってプレゼントします。好きな本は繰り返し何度も読むので、読んでいるうちに自分の思いがどんどん本の中に入っていっちゃう。同じ本が何万冊あったとしても、手元にあるこの本だけは紛れもなく私だけのもの! と思い入れたっぷりに付き合っています。
阿川佐和子訳、 大人の女の本音がつまった本

『首のたるみが気になるの』

阿川佐和子訳、 大人の女の本音がつまった本

プレゼントされた本の1位は太田光さんの小説『マボロシの鳥』(新潮社)ですが、私から贈った本の1位はノーラ・エフロンの『首のたるみが気になるの』(集英社)です。このエッセイが出たのは “美魔女” が注目されていた頃で、いかに美しく年をとるか、また一方では年を重ねるのって素晴らしい、といったムードが世の中に蔓延していた。

そんな中、この本だけは「年をとるなんていいわけないじゃない!」と叫んでいて、もう小気味よくっておかしくて。「年をとるのが嫌」と言いきるノーラの文章を読んでいるうち、「こんなおばちゃんになりたいなぁ」とも思わせてくれる、今までにない読書体験でした。

バッグの中がすごく汚いとか、女友だちとランチ会をしているとある時期から全員がタートルネックを着るようになったとか、家賃の値上げに怒ったりとか。

35歳の私では到底書けない、経験から生まれるエピソードを阿川佐和子さんがカラリと翻訳している。チャーミングな一冊です。
書き手の生活に潜り込み 楽しくもありどこか安心できる一冊

『夢二外遊記 竹久夢二遺録』

書き手の生活に潜り込み 楽しくもありどこか安心できる一冊

今読んでいる真っ最中なのが、竹久夢二の『夢二外遊記』(教育評論社)。この本を持って歩くと、自然と背筋が伸びるんです。早起きしてこれを抱えてカフェへ行き、広げて読んでいると、なんだか自分がいい女になったかのように錯覚できちゃいます。

もともと夢二の絵が好きでした。この本にもたくさんのスケッチが収められていて、旅の日記、随筆や詩的なエッセイ、断章などで構成されています。堅苦しくなくて読みやすい文体は、夏目漱石にちょっと似ているような気もします。描かれているのは昔のことだけど、全然古びていない。当時からきっと最先端を歩いている人だったのだろうと思います。

つらつら書かれる言葉を読んでいると、なんだか書き手と話しているような気持ちになる。書き手の生活を垣間見て、そこに潜り込んでいく感じが楽しいし、どこか安心できるみたい。

ほかの4冊もそうですが、ひとつのジャンルに括りきれない、多面的な本を繰り返し読む。新刊にはなかなかたどり着けないけれど、そんな風に読書を楽しんでいます。
●情報は、FRaU2016年8月号発売時点のものです。

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