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祝・ノーベル文学賞! カズオ・イシグロ作品のイチオシは 『わたしを離さないで』 [with]

2017年11月01日(水) 20時00分配信

今年のノーベル賞文学賞を受賞した英国の作家カズオ・イシグロさん。実は数年前にインタビューしたことがあったので、すごく驚きました。理由の一つはもちろん、自分が取材した相手がノーベル賞を受賞した!ことなのですが、イシグロさんが受賞したこと自体にすごくびっくりしたのです。

だってノーベル賞文学賞って、普通の人が読むとちょっと難しい、書いてあること頭良すぎてよくわからん…みたいな作家が多いから。イシグロさんはもちろん素晴らしい作家なのですが、本を読みなれていない人でもすごく読みやすく、だからアメリカで映画化されている作品も多いのです。中でも20~30代の女子に特におすすめしたいのは、日本でも舞台化、ドラマ化された『わたしを離さないで』。

(C)Everett Collection/アフロ

イシグロさんの作品は、辛い運命を受け入れながらも、その中で自分に大切な何かを守ろうと生きる人々を描いたものが多いのですが、『わたしを離さないで』はまさにそんな作品。舞台は、不老不死が半分実現しかけている現在とは別の「今」。物語は、外界と隔絶された全寮制の学園ヘールシャムで生まれ育った男女、キャシー、トミー、ルースの3人の関係を描いてゆきます。

(C)Everett Collection/アフロ

映画は彼らがともに育つなかで、仲良くなり、仲たがいをし、恋心を抱き、三角関係に陥り……という様々な心の変化を描いてゆくのですが、その物語がなぜこんなに心にグサグサくるのかと言えば、それは彼らが「誰かの不死をささえるための“提供者”」として生まれた子供たちだから。彼らは平均3回ほどの「提供」を経て、「終了」するべく運命づけられているのです~。

(C)Everett Collection/アフロ

そうした設定により「結局は死ぬ人間にとって、生きることに何の意味があるのか」という、この年齢の若者たちの悩みや葛藤、そんな中で生まれてしまった愛が、より痛切なものとして突き刺さります。胸が痛くて痛くて、ラストには号泣です。

(C)Splash/アフロ

設定からするとちょっとSF作品っぽいのですが、にもかかわらずこの作品が女子に絶大な人気なのは、その世界観が気品と端正の「英国」であり、それを描くイシグロさんの文章が繊細で美しいから。新たなるノーベル賞作家の最高傑作を、ぜひこの機会に、映画で、本で、お読みくださいませ!
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(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.(C) Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 

文/渥美志保

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