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オタ×プロ×陸上スケーター!?私はフィギュアのココが好き [FRaU]

2017年10月08日(日) 18時00分配信

伊藤みどり

古今変わらずもっとも美しく、もっとも偏愛されてきたスポーツといえばフィギュアスケートだろう。そこには、氷上はもちろんリンクに上がるまでの様々なドラマがあるから……。

昨年FRaUでは、そんなフィギュアスケートの“基本のキ!!”特集を組んだところ、大反響が寄せられた。そこでフィギュア特集再び! 今回は、スケオタ対談をお届けします!!
対談したのは……

この3人の対談、楽しみです!

対談したのは……

(左から)
奈良裕也さん
人気美容室「shima原宿」のアートディレクター、クリエイティブディレクター。ローラや水原希子などオシャレ有名人のスタイリングを手がける。フィギュアスケートファン歴24年。

川崎孝之さん
陸上フィギュアスケーター。羽生選手の「ロミオとジュリエット」やキム・ヨナ選手の「007」など30以上のプログラムを陸上で完コピ。その動画を投稿し、ファンの間で話題に。

辻馨さん
プロスケーター。選手時代は男子シングルで活躍した後、アイスダンスに転向。全日本選手権6位の実績を持つ。現在は引退し、海外のアイスショーを中心に演技を披露している。
アスリート派VS表現力派 アナタの好みはどっち?討論

伊藤みどり

アスリート派VS表現力派 アナタの好みはどっち?討論

表現力を発揮し自分の世界に観客を惹き込む選手。難易度の高いジャンプをバンバン飛んで高得点をたたき出すアスリートタイプの選手。多くのファンには「フィギュアはやっぱり表現力を競うもの」「いやいや、スポーツなんだから飛んでなんぼ」等々、持論があるもの。そこで3名のフィギュアスケート通が「私はこっち派」論争を展開。そこから、私たちの偏愛傾向がなぜ分かれるのか見えてきた……!!

 

編集部 フィギュアスケートファンにはアスリート系が好みという人や、表現力系が好みという人などいろいろ分かれる気がしていて。今日は様々な方面からフィギュアに詳しい皆様に、その論争を繰り広げていただきたいと思っています。そこで最初にちょっとお聞きしたいのですが……、川崎さんの“陸上フィギュアスケート”は、今やファンの間で有名。ダブルジャンプまで跳んですごいですよね。陸上でやろうと思ったのはなぜなんですか?

川崎 きっかけは安藤美姫さんなんです。もう10年前ぐらいに、彼女が某バラエティ番組でクルクル回っていて。若くてかわいい子が無邪気に楽しそうに回っている姿がとにかく印象的で、子どもながらに彼女に興味を持ちました。大学生になると、スポーツとしてもスケートを愛するようになって、「選手はどんな気持ちなんだろう」と陸上で練習するようになったんです。今でも僕は選手の気持ちに共感したいという思いでフィギュアスケートを観ているので、感情やそこに至るまでのドラマを想像してしまいます。そのため、アスリートっぽい人が好きとか、表現力が豊かな人が好きとかっていう系統への意識はないかもしれません。

奈良 僕は完全にパワー系が好きですね。伊藤みどりとかプルシェンコとかヤグディンとか。

伊藤みどり
1992年アルベールビルオリンピックの銀メダリスト。女子で初めて3回転アクセルと、3回転ー3回転のコンビネーションジャンプを跳んだレジェンド選手で、そのジャンプ力を超える選手はいまだ現れていないと言われる。

エフゲニー・プルシェンコ
ロシアの選手で、前回のソチを含めオリンピックに4回出場。男子シングルで金メダル1回、銀メダル2回獲得。4回転ジャンプを得意としており、4回転時代を大きく牽引した選手。ソチのシングルは、痛めていた腰が悪化し棄権。

アレクセイ・ヤグディン
ロシアの選手で、ソルトレークシティオリンピック金メダル、世界選手権3連覇の輝かしい実績を持つ。当時はまだ少なかった4回転ジャンパーで、同世代のプルシェンコ選手と常に激しい優勝争いを繰り広げていた。

ネイサン・チェン

辻 伊藤さんを超えるパワー系選手は、出てこないですよね。

奈良 そうそう、アグレッシブでスカッとしませんか?(笑) だから僕にとって、同じ3アクセルでも(浅田)真央ちゃんとみどりさんのは全くの別ものに感じるんですよ。

辻 僕はプロスケーターとして表現を追求していることもあって、鈴木明子選手が好きです。彼女の演技は本当に感動するし、苦労を乗り越えてきた背景を知っているのでドラマも感じる。もちろんジャンプもできないとあそこまで行けないですから、パワー派、表現派のどっちに分けるという話じゃないかもしれないですけど。

奈良 パワー系でもドラマを感じさせる人とそうじゃない人がいませんか?こないだのGPファイナルで銀をとったネイサン・チェンなんて、ジャンプはすごいけど僕は何も感じなかった。同じすごいジャンパーとしてなら、金博洋のほうが応援したくなるんです。一生懸命スパイダーマンを演じて不器用な笑顔とか浮かべて、なんかかわいらしいというか(笑)。

ネイサン・チェン
アメリカ合衆国の選手。17歳。今シーズンからシニアに転向し、GPファイナルで銀メダルを獲得。4種類の4回転ジャンプを跳ぶだけでなく、4回転ー3回転のコンビネーションジャンプも多く組み込むことから注目を集めている。

金博洋
中国の選手。19歳。昨シーズンまでは、唯一の4回転ルッツと4回転ー3回転のコンビネーションジャンプを跳ぶ選手として話題となり、世界選手権では銅メダルを獲得した。今シーズンはSPでスパイダーマンを演じ、表現力のアップに努めている。

アダム・リッポン

川崎 今、表現力が豊かな選手といえば、アメリカのジェイソン・ブラウンとアダム・リッポンあたりですよね。4回転はあまり跳ばないけど、演技の世界観を大事にしている。アメリカはアイスショーが盛んだし、そういう選手がわりと多いんですかね?

ジェイソン・ブラウン
アメリカ合衆国の選手。22歳。2015年の全米チャンピオン。ポニーテールという個性的な容姿と情感溢れる美しい演技で人気の高い選手。4回転ジャンプが跳べないことから世界大会での優勝はないが、習得すれば怖い選手に。

アダム・リッポン
アメリカ合衆国の選手。27歳。今シーズンの全米チャンピオン。王子のような容姿と柔軟性を生かしたドーナツスピン等が魅力で、女性ファンが多い。また両手を上げて跳ぶ3回転ルッツは「リッポン・ルッツ」と言われ有名。

辻 とはいえ、リッポンの両手を上げる3ルッツはべらぼうに難しいんですけどね……。ただぶっちゃけると、“表現力だけ”ではダメだけど“ジャンプだけ”なら上位に食い込める、という実情はあるんです。しかもジャンプって能力的限界があるから、ジャンプができる選手のほうが伸びしろがある。表現力は大人になるほど磨けますからね。女子はとくにそうで、思春期になると体型が変化していくから、あとはいかにジャンプを維持しながら演技力を高めていくかが課題になってきます。

奈良 わかります。ジュニアのときは楽しそうにクルクル回ってた子が急に跳べなくなるのとか見ると、かわいそうなんですよね。

川崎 でも今の採点で不思議に思うのは、一回いい演技をして演技構成点が出ると、その後も下がることがほとんどないのはどうなんだろう、と。振り付けなんてシーズンでそんなに変わらないのに、滑るたびにコレオグラフィ(振り付けに対する点)が増えるのが時々不思議に感じることも……。審判も短い時間で技術と構成をあれだけ細かく採点しなければいけないから、どうしても構成のほうは保守的になるんですかね? 技術点と構成点の審判を分けるのも、一つの手だという話もありますよね?

辻 そうですね。テクニカルコントローラーといって技術点専門の審判も置かれるようになったことだし、それはいいかもしれませんね。
編集部 今回フィギュアファンたちにアンケートを取ったところ、引退してもなお高橋大輔さんに対する書き込み量が多かったんです。多くの人がそこまで彼に惹かれる理由は何だと思いますか?

奈良 好きなのはパワー系だけど、僕も高橋選手の踊りは大好き。

辻 やっぱり気どってないところじゃないですか。普段の言動は謙虚な人となりが伝わってくるんだけど、一転、演技となると華やかで魅惑的で……。

川崎 いいギャップですよね。ハンサムで一見ナルシストっぽいんだけど、実はネガティブで弱い部分も隠さないという。

辻 だから、ファンは応援したくなるんでしょうね。真央ちゃんもそうかもしれませんね。

川崎 安藤選手も気が強そうに見られるけど、実は繊細で脆いというか、センシティブな方だと思うんです。そう思うとファンの応援の原動力って、選手の弱い部分だったりするのかもしれないですね。

編集部 最近、登場した若手の中では樋口新葉選手は一見タフそうですよね。ジャンプの感じなどを見ていても、彼女は久々に登場したパワフル系な気がして、注目しているんですけど。

樋口新葉
15歳。全日本選手権で2年連続2位に入った期待の若手。女子では珍しい3回転ルッツー3回転トウループのコンビネーションジャンプを跳ぶだけでなく、1つのプログラムに2回の3回転ー3回転を入れるなど、抜群の身体能力で平昌を目指す。

辻 あの子はいわゆるツンデレ系?で、かわいらしい性格だと思いますよ(笑)。

川崎 これは僕の持論ですが、ファンって、自分と似てるタイプの選手を応援したくなるんだと思うんですよ。だから違うタイプの選手が多いと、フィギュア界も盛り上がるから、いいと思うんですよね。

奈良 それ、分かるかもしれません! 僕も勢いでいくタイプだから(笑)、そういうタイプの選手が好きですし。

川崎 ただ羽生結弦選手だけは、そういう理由とは異なり、特別な気がします。彼の場合は、まるでファンタジーの世界から出てきたような、身近に感じられない雰囲気こそが好きになる要因だと思うんですよね。

辻 まさにアイドル的な存在でもありますよね。

奈良 きっと裏表なんてなくて、たとえば学校なんかでも、あんな王子様っぽい感じなんでしょうね。

川崎 もちろんそういう面にも惹かれるんだと思いますが、加えて彼がすごいのはチャンピオンになってからも成長し続ける在り方だと思うんですよね。あれはなかなか他の人にはできないこと。文句なしに尊敬できますよね!

カロリーナ・コストナー

編集部 さて、平昌まであと1年ですが、皆さんの注目ポイントは?

奈良 僕は、さっきも言ったネイサンがどれだけ伸びてくるかが気になります。あまりタイプの選手じゃないけど、GPファイナルのジャンプは衝撃だったから。若いし、あと1年あれば演技力もついてくるだろうから、怖い存在ですよね。とはいえ順調にいけば、羽生選手は堅そうな気がするけど。

川崎 男子と女子で見方が分かれますよね。男子は前回の金と銀の羽生選手もパトリック(・チャン)も出るだろうから、ソチから4年を経て二人がどう成長したのかが注目点になる。一方で女子はメドベージェワが絶対と言われるけど、初のオリンピックってやっぱり魔物がいるから、力を出し切れる人とそうでない人がいる。その精神力のぶつかり合いが楽しみです。

辻 女子はこないだのソチでキム・ヨナをはじめとする実力者や人気どころが引退しましたもんね。日本選手では村上佳菜子も先日引退をほのめかしていたし、カロリーナ・コストナーもどうだろう。だから次のスターの座を巡ってどういう戦いが繰り広げられるのか……。

キム・ヨナ
バンクーバーオリンピック金、ソチオリンピック銀と2大会連続でメダル獲得。ソチを最後に引退するまで、長く女王として君臨してきた。バンクーバーでは歴代最高得点を出しており、この記録は今も破られていない。(2017年1/15現在)

村上佳菜子
22歳。ソチオリンピック日本代表。3回転―3回転のコンビネーションジャンプを武器に、2014年の四大陸選手権で優勝するなど活躍してきた。が、今シーズンの全日本選手権で8位に終わり、引退を示唆した。

カロリーナ・コストナー
イタリアの選手。30歳。ソチオリンピック銅メダリスト。169cmの長身と長い手足を生かしたダイナミックな演技が持ち味で、欧州選手権で5回優勝している。昨シーズンは全試合を欠場したが、引退はしていない。

川崎 そこに真央ちゃんのようなベテランが食い込んでくると、なお楽しいですよね。

奈良 この際、プルシェンコも復帰しないかな?(笑)

辻 彼は別次元の存在ですからね、あるかもしれないですよ。ソチで腰を痛めて引退しましたけど、ボルト手術を終えたらまた4回転を軽々跳んでましたから、本当にとんでもない選手だと思うんですよ!

川崎 何はともあれ、まずは次の全日本選手権ですね。ここの一発勝負でオリンピックに行けるか行けないかが決まる。とくに若手は、一つのミスも許されない熱い戦いになるはず。

辻 ベテラン勢はもちろん、ジュニアからあがってきたばかりの若手も皆、既にすごいジャンプを跳んでますからね。演技構成点も取れるようになったら、必ずメダル争いに食い込んでくると思います!

 

●情報は、FRaU2017年3月号発売時点のものです。
Photo:AFLO, Tohlu Daimon

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