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【健康Q&A】助かる見込みがない場合、延命治療を拒否するタイミングは? [mi-mollet]

2017年10月05日(木) 14時00分配信

ロロさんからの質問
Q. 延命治療を拒否するタイミングについて知りたい。

60代の義父が肺癌で闘病中です。既に骨転移があり、治療は効果がないとのことで、緩和ケアに移行しました。そこまで本人は、弱音も吐かずに前向きに耐えていましたが、モルヒネ投与が開始されてから間もなく、これまでにないほどの痛みに。食事が取れない状態になってからは、トイレカテーテルや酸素マスクを本人が外そうとするのを止める戦いです。もう会話もできないほどなのですが、意識はあり、痛みにうめきながら「外してくれ」と目で訴えてきます。痰を取るとき暴れるのを抑えつけていると、自分も苦しみに加担しているようで、義父は「裏切られた」と思っているような気がしてなりません。急性期病院の緩和ケア病棟の現実を知りました。今後もし実の親が癌になり、助かる見込みがないときは、点滴も尿道カテーテルも酸素マスクも希望しないように伝えたい、と考える一方で、延命治療を拒否するタイミングの判断も難しいと感じています。どうかアドバイスをお願いします。(43歳)

特別ゲスト 樋野興夫先生の回答
A. 何も伝えなければ医師は延命治療を優先します。 医師とコミュニケーションをしっかり取って、 今後の治療を決められてください。

日本は安楽死は認められていませんが、尊厳死についてはいろいろな意見が交わされています。酸素マスクやカテーテルについても、もちろん本人や家族が希望をすれば止めることができますが、既に付けられているものを外すとなると尊厳死の問題にも触れてきますから、非常に判断が難しいところですよね。元気なうちから、「酸素マスクやカテーテルが必要になったときは付けないでほしい」と希望していればいいのですが、大抵の患者さんや家族はそのように明確に伝えられていません。そしてこれらは突然必要になり、家族が駆け付けたときには既に付けられている、ということが大半なのです。

私は常々、日本には“クオリティ・オブ・ライフ”の考えは浸透してきたものの、“クオリティ・オブ・デス”がないと痛感しています。おそらくロロさんのお義父さんを担当されている医師も、“クオリティ・オブ・デス”ではなく、延命することを優先順位の1位に治療されているのではないかと思います。痛みをとる治療というのは寿命を縮めることもあります。そして医師というのは命を取るわけにはいきませんから、最後まで延命に努めようとするものです。

ですからこれほどまでにお義父さんが苦しまれていて、それを和らげてあげたいと思うなら、そのことについて医師としっかりコミュニケーションを取られることが必要です。「寿命を縮めることになってもいいから、とにかく痛みを止めてほしい」と。緩和ケア病棟にいらっしゃるなら、そういった希望に対処してくれるはずですから、一刻も早く医師と話をされてください。

PROFILE

樋野 興夫(ひの おきお)
1954年、島根県生まれ。医学博士。順天堂大学医学部病理・腫瘍学講座教授。一般社団法人がん哲学外来理事長。医療現場と患者の間にある「隙間」を埋めるべく、全国各地で講演をおこなうなど精力的に活動している。著書は『がんばりすぎない、悲しみすぎない。「がん患者の家族」のための言葉の処方箋』(講談社)、『がん哲学外来へようこそ』(新潮新書)など多数。

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