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撮り下ろしインタビュー・西島隆弘の「愛の形」 [FRaU]

2017年08月18日(金) 20時00分配信

私生活では満たされなくていいんです 半分冗談で半分本気です……(苦笑)

Photo:KoheyKanno

私生活では満たされなくていいんです 半分冗談で半分本気です……(苦笑)

世の中には、いろんな形の愛がある。

2013年夏、満を持して “Nissy” 名義で初のソロ楽曲を発表した。男女の恋愛観を描いた作品や、これまで西島がこだわり抜いた作品が展開され、ついに昨年から今年にかけては、大阪、東京、横浜でアリーナ公演を行い、たった一人で計7万人を熱狂させた。4月19日には7枚目となるソロシングル「花cherie」をリリースする。

「今までは、相手のことを一途に思う、ストレートな愛を歌うことが多かったんです。でも、毎回僕なりの裏テーマはあった。楽曲を作るときは僕、歌という素材をどうしたらより多くの人に楽しんでもらえるか、日常生活の中で励まされたり、癒やされたりしてもらえる歌になるかをすごく考えるんです。ピュアで透明な気持ちもそうですが、主人公の心情に “切なさ” のような陰影があるほうが、感情が入りやすかったり。今回も、主人公の心情は、すごく細かいところまでイメージしています。誤解を恐れずに言えば、“100%純粋に、ただ相手のことだけを想い続ける” ような愛し方って、女の子の妄想や願望であって、実際にはありえない気がしちゃうんです(苦笑)」

Photo:KoheyKanno

役者としても活躍する彼だが、演じるときにしても、歌うときにしても、自分の中にある自身の感情をそのまま出すことは、できるだけしてこなかった。歌詞を書くときも、自分のプライベートを作品に投影させることが、あまり好きではないという。

「バンドだったら、自分たちの内面を曝していくことがオリジナリティになるけれど、グループ活動においては、僕らは楽曲提供された曲を歌うことが多いので、自分の中にないワードに感情を乗せなきゃならない。そこに乗っけてる感情自体が “フェイク” だったりもします。でも、発信しているそのものはエンターテインメントだから、最終的にはお客さんが楽しんでくれたらそれでいい。

お芝居だって、僕は台詞を書いてないから、役自体の内面にしても背景にしても僕とは別物。でもその上で、テーマと楽曲が決まってから、アレンジにアイディアを出したり、レコーディングで言葉のニュアンスを変えたり、納得行くまでこだわり抜いて作っている。

あるキャラクターに自分の感情を乗せるという作業は、音楽と芝居は近いものがありますけど、俳優は、現場に呼ばれたからには、その作品に染まるのがベストだと思っています。現場での、俳優のあるべき居方って、演出家によって全然違うんです。“ちゃんと考えてきただろうな” って試す人もいれば、ノープランで入ってその場で肉付けするほうが好きな人もいる。だから、どんな現場でもとにかく柔軟に対応できるように(笑)。

僕は、自分の私生活でのゴタゴタとか、葛藤とか、ハッピー感みたいな部分を音楽や芝居に投影させたくはあまりないです。ありのままを曝け出して、わかってくれる人がわかってくれればいい、という表現もあると思うけれど、それをエンターテインメントとして成立させるのって難しくて。僕は、自画自賛はせず、自己陶酔もしないで、できるだけエゴは出さないようにして、求められるものに応えていきたい」

Photo:KoheyKanno

“エゴ” なんていう一種哲学的な言葉をさらりと口にするところは、自分の中から湧き上がる情動と常に闘っている表現者の証なのかもしれない。撮影中も、屈託なく笑ったと思ったらふと黙って、その瞳に冷酷さを映し出したり。善人なのか、悪人なのか。少年なのか、大人なのか。高揚しているのか、退屈しているのか。無垢なのか、不純なのか。ミステリアスな雰囲気に翻弄させられる。30歳を迎えて日常がどんどん仕事優先になっていく中、プライベートを充実させたいなどという思いも、どんどん薄れていっているのが現実なんだとか。

「この間スタッフと話していて、プライベートでの結婚願望とか、一般的に30歳が考えるような将来に対する欲が、僕にはあまりにないことにビックリしました(苦笑)。もちろん自分の時間は欲しいですよ、でもそれも、仕事に繋がる自分の時間なんです。今は、エンターテインメントを作ったり想像したりすることがものすごく楽しいし、LIVEのようなみんなで作り上げる空間には、エゴを出すのが嫌いな僕でも(笑)、しっかり酔いしれることができる。そのときも、『ここまできたら、目指す先はまだあるよね。行けるところまで行きたいね』って話したんです。わかんないですけどね、どこまで行けるか」

Photo:KoheyKanno

彼は具体的にどこを目指そうとしているのか。ただ、恋愛とか結婚とか、そういう世間が考える以上に手に入れたいものや見てみたい景色が、明確に、今の彼にはあるのだ。

「この12年間、周りからは『トントン拍子だね』とか言われるけれど、順風満帆では決してなかった。ソロになったタイミングも、僕は遅かったほうだと思うし、年齢が上がるにつれて身体に無理もきかなくなってくるから、いざソロでやってみると、『もうちょっと早かったら』なんて悔しさも生まれたりした。一方で、その悔しさがモチベーションにもなったりして……」

Photo:KoheyKanno

初めてのソロLIVEを経験して、発見があった。“求められていることに応えることがエンターテインメントの中のひとつ” と考える彼は、LIVEでも、「こういうことをしたら喜んでくれるだろうな」という発想をもとに演出を考えていたら、そのファンに対する “思い方” に、彼なりの “恋人の愛し方” と似たものがあったのだ。

「LIVEは、“僕のことを好き” という前提でお客さんが集まるわけで、その人たちを喜ばせる行為は、恋人を喜ばせる感覚にすごく近かった(笑)。でも、もしLIVEのとき、僕自身のプライベートが充実していたら、ああいう演出は思い浮かばなかったと思う部分もある。

普段から音楽を必要として、ライブに足を運ぶのって、どこか、満たされないものを抱えた人たちだったりすると思うんですよね。びっくりしたのが、ファンの人がある時のニッシーが一番カッコいいと言っていた時期がスタッフ情報であったみたいなんですけど、そのタイミングが自分の中では一番メンタル的にも体力的にもコンディションが良くなかった時期で……(苦笑)。でも、精神的に満たされてない状態だからこそ、満たされない者同士共鳴したのかもしれない(笑)。

表現する側って、何か強い哀しみや屈託を抱えていたほうが、強いエネルギーが生まれるものなのかもしれないと思う。だから当分……、向こう10年ぐらいは僕、私生活では満たされなくていいんです。半分冗談で半分本気です……(苦笑)」

世の中には、いろんな愛の形がある。彼の愛は、エンターテインメントの世界と、その世界に生きる彼を愛するファンのために、惜しみなく、真っすぐに注がれている。
PROFILE

Photo:KoheyKanno

PROFILE

西島隆弘 Takahiro Nishijima

1986年9月30日生まれ。北海道札幌市出身。2005年AAAのメンバーとしてデビュー。’09年初主演映画「愛のむきだし」(園子温監督)で数々の新人賞を受賞。舞台は、’12年には蜷川幸雄演出の「下谷万年物語」にも出演、高い評価を得る。AAAとしては、昨年初の東京ドーム2days公演を成功させる。Nissyとしては1st LIVEにしてアリーナ6公演を超満員で成功させた。4月19日Nissyとしてソロ7枚目となる「花 cherie」をリリース。その後、自身初となるソロLIVE DVDを発売予定。
●情報は、FRaU2017年4月号発売時点のものです。

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