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「貯金がない、老後が不安」貯金が苦手な人はどうしたらいい? [おとなスタイル]

2017年08月14日(月) 10時00分配信

Q.貯金が苦手で、なかなか貯まりません。
お金がないと、豊かな老後は送れないでしょうか? 


A.貯金よりも、健康。
長く働いて年金受給を遅らせることが、一番お得な生き方に!

貯金には向き・不向きが。なくても心配はご無用です 

「安心してください。貯金が苦手なのは、あなただけじゃありません。この世の中には性格的に貯金に向いている人と、向いていない人がいるのです。そして、かくいう私も貯金が苦手なタイプです」
と話す田中靖浩さん。田中さんといえば、著書『貯金ゼロでも幸せに生きる方法』で、公認会計士の立場から考える“お金にとらわれない自由な生き方”を提唱したことは記憶に新しい。

「たとえば車でショッピングセンターに買い物に行ったとします。2時間まで駐車料金は無料、というとき、人間の行動は2つに分かれます。時間以内できっちり買い物を終わらせようとする人と、せっかく買い物に来たのだからと、駐車料金を自腹で払っても納得がいくまで買い物をする人と。貯金に向いていないのは、後者です。時間内に買い物を終わらせて“節約できてよかった”と思える人は、貯金に向いている。私は、そもそも2時間で買い物を終わらせるというような制約を考える自分が嫌いなので、明らかに貯金には向いていない人間なのです」

経済が下向きで、社会の空気は先行き不安に満ちている。こんなご時世だから貯金を、と心配する人が多いのも、わからなくはないけれど。

「ただ、不安心理から貯金に走るというのは、ちょっと違うような気がします。貯めるのであれば、楽しく貯められるほうがいい。それができる人はどんどんやってください。でも、私のように貯金が苦手な人もいて、じゃあそういう人たちの老後がすべてお先真っ暗かというと、けっしてそんなことはない。むしろ、これだけみんなが不安な時にこそ、目先のことだけにとらわれず、もう一度、大きな視点でお金について考えてみることが必要なのではないでしょうか」

貯金に頼らず豊かな老後を過ごすためには、どんなことが大切なのか。
田中流の極意を聞いてみよう。

「まず第一に、長く働ける状態を作ることです。会社を辞めた後も、小規模でいいから、とにかく細く長く働き続ける。ささやかな仕事でも責任とやりがいを持てれば、生活にハリも出てくるでしょう。ご隠居さんになってのんびり過ごすのもいいけれど、会社を辞めてからも、楽しそうにマイペースで働き、生き生きとしているお父さんやお母さんの姿を子供たちに見せることができたら、それはとても素敵なことだと思いませんか? 高齢化社会で大人がみんな辛そうにしていると、子供たちもしょんぼりしてしまう。元気に働くシニア世代が増えるのはいいことだと思います」

健康な身体があれば貯金よりも安心できる

現役でずっと働き続けるためには、健康でいることが鍵になってくる。

「そう、健康な身体こそが、貯金よりはるかに価値のあるものなんです。
それには50代からの心がけが、とても重要。体力は徐々に落ちていきますが、最低でも散歩ができるだけの足腰は維持しておくべし。でないと、働きに行くこともできません。
今の世の中、働き詰めでストレスをためて体を壊してしまう人がたくさんいます。人間の身体は思った以上に持久力があるので頑張ってしまう。ある日突然、ガクッときて入院……それは困ります。そんなことにならないように、自分の体の声をちゃんと聞くことが大事です。老後に介護や通院がない状態を維持することは、周りに負担をかけないことにもつながる。子供にとってみれば、親の貯金よりはるかにありがたいものかもしれませんよ」

願わくば、元気で働いて、年金の受給を遅らせるのが理想的、という田中さん。老齢基礎年金は通常65歳から支給されるものだが、60歳を過ぎたら希望次第で受給を早めたり、遅らせたりすることもできる。

「不況の影響か、いまは年金を繰り上げ受給してもらう“早食い”の人が増えています。でも、早めると、その分だけ減額されることになるので、私としてはおすすめできません。受給の時期による年金額の違いを見てみましょう(グラフ参照)。
老齢基礎年金の受取総額

参考:日経BP社『サラリーマンのための退活読本』

老齢基礎年金の受取総額

65歳を100%とすると、60歳から年金をもらった場合の支給率はその70%。1年間の支給額は、65歳でもらった場合は約78万円、60歳の場合は約54万6000円だ。60歳からもらい始めた人が、繰り上げしない場合の年金と同額になるのは76歳8ヵ月。繰り上げ受給は一度申し出ると取り消すことはできないので要注意。
繰り上げは1ヵ月単位でできますが、ひと月繰り上げるごとに受給額が0.5%ずつ減額になります。60歳から受給した場合は、全体で30%の減額に。その後もその金額のまま支給され続けるので、76歳8ヵ月で65歳から受給している人の方が有利になるという計算です。また、繰り上げをすると障害基礎年金がもらえなくなるデメリットもあるので、“早食い”はできるだけ避けたいところ。人生の方向として、かなり危うい気がします。
反対に、受給を遅らせると、月々の金額は上がります。今のところは一番遅くて70歳まで繰り下げることができ、その場合、年金額は42%、月3.5%のアップに。繰り下げたほうが金額も上がってお得ですし、そもそも年金をもらわなくてもいい状況にあるということは、それだけお金にまだ余裕があるということなので、精神衛生上もそのほうがハッピー、というわけですね」
A.「企業からお金をもらう」生活から、「ご縁が“円”を作る」生き方へ。
こんな時代だからこそ、50代の経済観には、マインド・チェンジが必要です


健康な身体の次に、長く働くために大切なものはなんですか?

「それは友達です。できることなら、ご飯を食べたりお茶を飲んだりする“仲良しさん”で終わるのではなく、何人かで集まって一緒に仕事ができるような友達が最高です。“100万円の貯金よりも100万円を一緒に稼げる友達を持っているほうがはるかに幸せ”……これは常日頃、私が言っていることです。
今は企業に属さなくてもインターネットを使って、さまざまなスタイルでお金を稼ぐことができる時代になりました。以前、おじいちゃんが作った方眼ノートを孫がツイッターで宣伝したら、注文が殺到して大ヒットしたということもあったように、個人でも大企業に勝つ機会は山ほどあるし、女性でもそれができる環境が整っています。むしろ、長年企業にいた時の価値観を退職後もずっと引きずっているおじさんたちより、女性のほうがそのようなビジネスに柔軟に参加できる人が多いのです」

実際、田中さんがネットショップ関連の講演会に行くと、会場に来ている人の多くが女性なのだという。

「会社を辞めて個人になって、その個と個が緩やかにつながって仕事をする。そこには上司も部下もない、みんながフラットな関係。そんなネットワークみたいなものができて、一緒に仕事ができたらいいですね。
たとえばショップなら、パソコンが得意な人はホームページを作り、苦手な人は商品の梱包を担当するなど、それぞれの長所を生かし、短所を補いながら仕事をする。江戸時代には長屋を中心にそういう助け合いの社会がありました。今でいうなら、デジタル長屋ということでしょうか。50代の方々にはぜひその働き方の見本を作っていっていただきたい。そうすれば、後に続く世代の人たちも、将来に対して明るい希望を持てるようになります。これからは“ご縁の縁がお金の円を作っていく”生き方を目指したいもの。貯金ができない人は、ぜひ今からご縁貯金を積み上げていきましょう」

自分ではおろせない、宇宙貯金を積み立てよう

“そしてもう一つ、ぜひお勧めしたい貯金がある”といって、田中さんが教えてくれたもの。それは、“宇宙貯金”という考え方……。

「たとえば私が、ご縁があるBさんに協力をしたとします。すると、私が死んだ後にBさんが私の子供に“あなたのお父さんにはお世話になりました。だから、あなたが何かをするのならぜひ協力させてください”といって、良き応援をしてくれる。これが宇宙貯金です。貯金をおろすことができるのは、私の子供や友人たちだけ。本人はおろせません。
税金のかからない相続です。宇宙貯金を考えると、日頃から人に対する振る舞いや接し方も変わってきます。そうやってご縁をつなぎ、楽しく生きていきたいですね」

 

 

■Profile
公認会計士
田中靖浩さん
田中靖浩公認会計士事務所所長、外資系コンサルティング会社などを経て独立。経営・会計の基本から最新動向を真面目に、ときには笑いを交え変幻自在に解説する。書籍執筆、新聞・雑誌連載、ラジオ・テレビ出演など多数。

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