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漫画家 山下和美「変化を楽しむ数寄屋暮らし」 [おとなスタイル]

2017年07月02日(日) 10時00分配信

茶室で自作の掛け軸を広げる山下さん。知人から表装を頼まれることもあるという。

マンションで長年ひとり暮らしを続けてきた漫画家の山下さんが一念発起して建てた数寄屋は、四季を身近に楽しめる、風情溢れた和の住まい。
和の風情に心を整え、季節の移ろいを慈しむ

竹垣や屋根瓦、玄関の網代編みなど、いたる所に匠の技が。

和の風情に心を整え、季節の移ろいを慈しむ

伝統的日本建築を手がける建築家との運命的な出会いにより、長年のマンション暮らしを捨て、数寄屋を建てる決意をした山下和美さん。それは人気漫画家として走り続けてきた彼女が、人生でふと立ち止まった瞬間だった。
「以前から、お茶室の世界に憧れはありました。こんな完璧な空間があれば、一生インテリアに悩まないだろうなと。茶室の様式を取り入れた数寄屋造りは、初期投資にお金はかかりましたが、完成したら一生変えなくていいというのは発見でした。普通の家は経年劣化でいろんなところがチグハグになることもありますが、数寄屋は年月を重ねるほど味が出る。今から楽しみです」

1階の和室。掘りごたつに座れば、竹垣の向こうに広がるお寺の木々の借景に心癒やされる。

お寺の裏という閑静な環境に建つ山下邸。格子戸をくぐり、玄関ホールから和室広間に入ると、そこにはお寺の雑木林を借景にした、静謐な空間が広がっている。掘りごたつに座り庭を眺めれば、どこか懐かしい気持ちに包まれていく。
「2階の仕事場は、残念ながらいつも散らかっています。だからこそ、ここだけはモノを置かないと決めたんです。片付いた客間がひとつあると本当に便利。急な来客にも慌てません」
仕事に忙殺されていても、心休まる空間がある幸せ

畳敷きの玄関ホールも端正な空間。向かって左手が和室、右手の障子を開けると中庭が。

仕事に忙殺されていても、心休まる空間がある幸せ

6年前に越してきたとき膨大にあった荷物は少しずつ整理し、念願のすっきりした空間にした和室。外に出ているのは掘りごたつと座卓だけ。ソファもテーブルも飾り棚も必要なし。テレビさえも押し入れに収納し、エアコンも天井裏へ設置する徹底ぶり。ふだんはスタッフとここで食事もするが、生活臭は残さない。
一方、台所は使い勝手と掃除のしやすさを優先し、システムキッチンにステンレスを採用。ただし和室と違和感のないよう上部の棚は木製扉を合わせた。

1階の廊下壁面に設けた無垢材の本棚。自著や参考書籍が並ぶ。裏には収納部屋が。

「モノを捨てられない性分だから」と、廊下横には、収納部屋を確保。ここに処分一歩手前のモノを保管し、1年後に未練を感じなくなったら手放すことにしているそう。仕事柄増え続ける本は、廊下の本棚と階段の壁面にまとめて収納。すっきりモノのない空間は、じつは地道な工夫と努力の賜物だった。

庇(ひさし)や竹垣は、和室からの眺め を考え、低く設計。

多くの時間を2階の仕事場で過ごす多忙な山下さんだが、この家には季節を愛でるしかけがそこかしこに。春には中庭のしだれ桜でお花見、夏はお寺の雑木林を借景に夕涼み、秋は庭のいろはもみじが障子や襖に影を落とし、美しい光景が繰り広げられる。
「これだけの自然の美が楽しめるのは、うれしい誤算でした」

和室には家電はほとんど置いていない。家に馴染む木目調の加湿器は通販で購入。

そんな山下さんが家を建ててから始めたのが表装だ。床の間を飾るため、自作の絵で掛け軸を作製する。庭で摘んだ草花をそっと生け、四季折々の掛け軸を愛でるのは和室ならではのお楽しみ。表装が上達したら、障子の張り替えにも挑戦したいという。少しずつ手をかけながら、家をひとつのインテリアとして慈しむ暮らしは現在進行形。変化を楽しむ未来が待っている。
山下さんの快適インテリア術3ヵ条

1.和室をすっきり保つ大容量収納

山下さんの快適インテリア術3ヵ条

増え続ける本対策として、階段と廊下の2ヵ所に本棚を設置。静謐な空間を支える収納専用スペースに。空間と調和する無垢材を使用。

2.実用重視のキッチンで清潔感を

数寄屋とはいえ、お手入れ簡単なオールステンレスのシステムキッチンを採用。中古の事務机を作業台に活用し、実用的なアイランドに。

3.趣味と実益を兼ねた和のインテリア

日本家屋で唯一飾る場所といえば床の間。大学講座で表装を学び、掛け軸を自作。趣味と実益を兼ね、数寄屋暮らしを自由に楽しむ。
■Profile
山下和美
やましたかずみ
漫画家。1980年デビュー。代表作は『天才 柳沢教授の生活』『不思議な少年』(講談社)。家づくりの経緯については『数寄です!』(集英社)に詳しい。最新刊は『続・数寄です!』2巻。

 

『おとなスタイル』Vol.7 2017春号より
撮影/大河内 禎

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