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上野千鶴子“孤独な老後”を明るく迎える [おとなスタイル]

2017年06月27日(火) 10時00分配信

撮影/やまざきともよ

10年前に発表した『おひとりさまの老後』を皮切りに、ひとりが基本、で生きる心地よさを研究し続けてきた上野千鶴子さん。時代とともに、おひとりさまと、それを取り巻く環境はどう変化してきたのか。

上野千鶴子「おひとりさまを追いかけて」

“長生きすればするほど、みんな最後はひとりになる。結婚したひとも、結婚しなかったひとも、最後はひとりになる。女のひとは、そう覚悟しておいたほうがよい。”
――こんな言葉で始まる上野千鶴子さんの『おひとりさまの老後』。

女性学、ジェンダー研究の第一人者として知られる上野さんが、子供に頼らない、ひとりが基本の老後の暮らし方に徹底的に向き合って書いたこの本は大きな反響を呼び、75万部のベストセラーとなった。
本を発表したのは2007年。上野さんが50代後半の頃だった。

老後を研究する、と発想を変えると楽しい学びが見えてきた

最初の動機はまったく私利私欲のためでした。子供がいない、おひとりさまの私が先々、安心して生きていくには“どこに住んでどう暮らすか・人とのつき合い方やお金はどうするか・どんな介護を受けるか”。当時、漠然と不安に感じていたことを調べようと思ったのがきっかけでした。でも、調べていくと実に、奥が深い。自分事だけにするなんてもったいない。学問としてきちんと学ぼうという気持ちに変わっていったんですね。しかも、探るほどに“なーんだ、シングルの老後ってこんなに楽しいんだ!”という結論が出てきて、それを一冊にまとめたのが、おひとりさまシリーズの最初でした」

それから10年。
びっくりするほどのスピードでおひとりさま時代がやってきた。
「この時代の変化の速さは私の想定をはるかに超えていました。最初は私のような、いわゆる世間的に“かわいそう”と言われる少数派シングルのために本を書いたのです。何しろ私たちは“子供がいなくて老後はどうするの?”と真顔で心配されてきた世代ですから。
それが、いつの間にか、市民権を得てしまった。おひとりさまは今や多数派ともいえる時代になっています。かつては結婚前か、夫と離死別した後まりファミリーを作る前か後か、にしか使われない言葉であった“おひとりさま”が一つのライフスタイルになり、今もその数は増え続けています」

とはいえ、やはり将来、老後をひとりで過ごすことに、漠然と怖さや不安を感じている人も多いのではないだろうか……。
「私も最初はそうでした。でも、2000年に介護保険法が施行され制度が大きく変わりました。
“家族に頼らない・頼れない老後”の人たちの介護を社会も後押ししています。高齢者に、施設に入らなくてもおひとりさまで大丈夫ですよ、といえるくらい、介護や福祉のインフラは育ってきています。
介護は初期の頃は4兆円でしたが今や10兆円市場といわれるくらい、巨大な成長産業です。人材も事業も生んできました。私の気持ちも50代の頃と比べて圧倒的に楽になりました。おひとりさまが大きな顔をできる世の中になったのですから。私の講演を聞いた多くの人が“ホッとしました。老後が明るくなりました”と言ってくださいます。
ただ大事なのは、無関心や無防備でいないということです。
50代の今から少しずつでも考えていけば、不安は徐々に減っていくはず。きっと年齢を重ねるのが楽しくなり、ひとりという未来にも明るく立ち向かえるはずです」

撮影/やまざきともよ

■Profile
上野千鶴子
うえのちづこ
1948年、富山県生まれ。社会学者。東京大学名誉教授。認定NPO法人WAN理事長。『おひとりさまの老後』(法研 ’07年)に続き、『男おひとりさま道』(同 ’09年)、『おひとりさまの最期』(朝日新聞出版 ’15年)でおひとりさまシリーズ三部作が完結。『ケアのカリスマたち 看取りを支えるプロフェッショナル』(亜紀書房’15年)ほか著書多数。

 

 

『おとなスタイル』Vol.7 2017春号より

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