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陶芸家クリスチャンヌ・ペロション作品「あの色はどこから生まれる?」 [おとなスタイル]

2017年06月25日(日) 10時00分配信

憧れのトスカーナのアトリエ兼自宅へ―。

桐島かれんさんが、昔からずっと、大切に使い続けている茶碗の作者がクリスチャンヌ・ペロションさん。
美しい器のこと、丘の上での暮らしのこと、生き方のこと、かれんさんが人生の先輩に聞きたいことはたくさん。
トスカーナの自然の中で、初対面とは思えない女ふたりのお喋りが始まった。
元は教会だったアトリエに美しい器が山ほど!

ペロションさんのアトリエ兼ご自宅

元は教会だったアトリエに美しい器が山ほど!

トスカーナの丘のてっぺんの何もない場所、本当にペロションさんの家しかない―。訪れたことのある人から、そう聞いていました。フィレンツェから車で1時間半ぐらいの、人里離れた自然の中です。木々の間から、煉瓦造りの館が現れたときは、胸が高鳴りました。憧れのペロションさんのアトリエ兼ご自宅です。

ペロションさん

すぐにペロションさんとお嬢さんが館から出てきて、笑顔で出迎えてくださいました。
「もしかしたら、以前にパリの見本市でお会いしませんでしたか」と声をかけてくださったのは娘のポリーヌさん。
そう、2~3年前でした。世界中のバイヤーが集う見本市で、いつかは作品を自分の店に置きたいと夢見て、ペロションさんのブースをこっそり覗いたことがありました。まさか、覚えていてくださるなんて。でも、ペロションさんご本人とは初対面です。

かれん「はじめまして! 確かペロションさんが初めて日本で個展を開かれたのは、1996年頃でしたよね。そのときに私は見に行って、一目で惹かれて、器をいくつも買って帰りました。
今も大事に使っています。欠けてしまったところは、主人とふたりで金継ぎをして愛用しているんです」

ペロション「まあ、ご自分たちで金継ぎをなさるの? 素晴らしいですね」

館に入るとすぐに、以前は教会だったことをしのばせる天井の高い部屋があって、ペロションさんの器がそこかしこに並べられています。なんて美しい! それらは器という実用品でありながら、魅惑的な宝石のよう。眼福です。興奮してしまいます。

 

この美しい色はどこから生まれたんですか? ―かれん

この土地で自分の中に蓄積されていった色なんです。地層のように ―ペロション
ペロションさんの器でみんなでお昼ごはんを!

ペロションさんのアトリエでは、ご本人とお嬢さんをはじめ、数人の職人さんが立ち働いています。

ペロションさんの器でみんなでお昼ごはんを!

かれん「陶芸は大変な仕事ですか?」

ペロション「やることがたくさんありますね。毎日、朝8時半から仕事を始めて、夕方5時にアトリエを閉めます。私たちの生活は規則正しいんです」

ポリーヌ「お休みの時間もきちんと決まっています。ほら、そろそろお昼の時間、ごはんにしましょう。2階のキッチンで父が作ってくれていますよ」

私が見学させていただいている間にも、みなさん、黙々と手を動かしている。

なんと、私のお昼も用意してくださっていたのです!
「飲み物は白ワインでいいかな?」とシェフ兼ホストを務めてくださるのは、ペロションさんのご主人のカスパルさん。ご長男とこの地で農畜産会社を営んでおられます。
「乾杯!」の合図で楽しいランチタイムが始まりました。私はここぞとばかりにインタビューを開始です。

白ワインで乾杯。

かれん「形も好きですが、ペロションさんの器の色は本当に美しい。いったいどこから湧き出てくるのですか?」

ペロション「トスカーナの自然の色ではないかと言う人もいますね。そう思いたいのもわかるけれど……私は昔絵を描いていて、絵描きになりたかったんです。器も絵と同じで、色は私の表現のひとつ。自然をそのまま写すのではなく、自然の中にあるさまざまな色を見て、美しいと感じたことが自分の中に地層のように積もっていく。それが私の中で発酵して、あるとき器の色として生まれ出るのだと思います」

なるほど。「トスカーナの自然の色です」と言ってしまえば簡単だし、人も納得するのに、彼女はそうは言わないわけです。とても素直な方だし、本物のアーティストなのだと思いました。

ペロションさんの器の色は本当に美しい。

かれん「私は子どもが4人いますが、ペロションさんもポリーヌさんの上に、お姉さんとお兄さんがいて、3人のお子さんを育てたとか。子育て中も仕事をされていましたか?」

ペロション「ええ。陶芸は窯入れの時間などが細かく決まっているので、小さな子どもがいると難しい。それで陶芸はお休みして、自然の植物の染料で羊毛を染めるレシピの研究をしていました。やれることをやっていたんです」

うれしいな。子育て中もやっぱり、コツコツとできることを続けていたんですね。親近感が湧いてしまいます。
ちなみにカスパルさんのセロリとズッキーニとからすみのサラダ、アーティチョークのパスタ、おいしかった!

子育て中も仕事を? ―かれん

ええ。できることを少しずつしていましたよ ―ペロション
■Profile
クリスチャンヌ・ペロション/陶芸家。スイス・ジュネーブ出身。パリの国立高等装飾美術学校(Ecole des Arts Decoratifs)で陶芸を学び、1971年スイスにスタジオを設立。’79年にイタリア・トスカーナの丘の上に建つ、かつて教会だった古い建物をアトリエ兼住居とし、以来活動の拠点とする。静謐なフォルムと美しい色が特長の器は、フランスのファッションデザイナーやクリエイター、感性豊かな日本人にファンを多く持つ。

 

桐島かれん
きりしまかれん/「ハウス オブ ロータス」クリエイティブディレクター。1964年、作家・桐島洋子の長女として生まれる。大学在学中にモデルを始め、女優、ラジオパーソナリティー、雑誌連載とマルチに活躍。’93年に写真家の上田義彦氏と結婚。22歳を筆頭とする四児の母。自身が全面的にディレクションするショップ「ハウス オブ ロータス」二子玉川店が3月8日にオープン。

 

 

『おとなスタイル』Vol.7 2017春号より
撮影/相馬ミナ

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