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羽海野チカ『3月のライオン』の裏話を語る。「将棋は勉強したけれど…」 [FRaU]

2017年04月06日(木) 18時00分配信

大ヒット漫画『ハチミツとクローバー』『3月のライオン』の著者である、漫画家・羽海野チカさん。めったにメディアに登場しない超人気作家の知られざる姿に、プロインタビュアー・吉田豪が迫る!

(C)Chica Umino/HAKUSENSHA 

羽海野 なんでもわかってる人が描いてるふうに描くのが上手で、何もわかってないのに描いてるんですよ。これで大丈夫なのかなと思うんですけど、大丈夫みたいで。将棋もまったくわかんないのに描いてるんですよ。いまだになんにもわかってないんですよ。

――ホントに何もわかってないんですか?

羽海野 生きている人間相手にあまり指したことないぐらいの。3年間勉強期間を置いたのに、難しすぎて何もわからなかったのに、連載が始まってしまいまして……。でも、『月下の棋士』の能條純一先生が将棋を指せないけど描いてらしたって聞いて。あと、梶原一騎先生も野球やったことなくても『巨人の星』を書いたって聞いて、じゃあ大丈夫だと思って。

あと、知らない人が描いたら難しいことを描けないから、一般の方にもわかりやすいのではというふうに気持ちを切り替えて、そのまま爆進しています。だから、まったくわかんないまま描いてるとは……そろそろみんな気づいてきたのかな? ……あ、怖い話したら寒くなってきた。

――そろそろバレるんじゃないか、と(笑)。でもボク、全然気づかなかったですよ。相当勉強したんだなと思いながら読んでました。

羽海野 勉強はかなりがんばったのですが、将棋自体がとてもとても難しかったです。だから将棋を指せる人をものすごい尊敬する気持ちはどんどん強くなりました。だって、こんな針の先みたいな作業をみんなしながら闘っているのかと思うと……。ニコ動で対局の中継をやってて、みんながコメント入れてるのを見てるだけで、これコメントを入れてる人もみんな将棋を指せるんだと思うとすごいってなります。

私、そのツッコミがおもしろくて観ていて。何を言ってるかはわからないんですけど、みんなすごいおもしろいツッコミを入れるんですよ。いつまでも駒がぶつからなくて、お互いの駒を取らない将棋が2日目まで続いちゃったときに、みんな駒台の気持ちになって「早く乗れよ」「急いでるんだろ、乗ってけよ」とか語っていて、おもしろかった。そんなの浮かばないから、そのまま漫画で使っちゃいたいような気持ちです(笑)。

――ゲームとかでは将棋をやったりするんですか?

羽海野 『ハム(スター)将棋』っていうネットの無料のをやったんですけど、ハムスターに勝てなくてあきらめました。ハムスターに負けるとハムスターが笑うんですけど、ホントに悔しくて、もうやらないってなりました。知らなくてもがんばって描きつづけるんだ!! っていうところに、いまきてます。

助けていただき、担当さんに通訳に入っていただき、担当さんに「ナメてた相手がホントは強いって知って恥ずかしくなるような棋譜を探してください」とかオーダーして、一局説明してもらってメモ取って、「じゃあ、こことここを描くのでここの棋譜をください」もう1回それをふまえて最初から! とかやってます。

――最近、大谷翔平さんにインタビューしたんですけど、大谷さんが「漫画は読むけども、野球漫画だと粗が見えちゃうからほかのスポーツ漫画しか読まない」って言ってたんですね。

羽海野 『ライオン』は私が将棋できないけど、将棋の部分は先崎学先生や田中誠さん、監修の方々に作ってもらってるから読めるって言われました。嘘は描いてないので。あと、漫画的におもしろいようにって描いちゃった部分は、そこは笑いとして。

穴熊からふつう熊は出たり入ったりしないんですけど、絵で描いてみたくて棋譜をお願いしちゃったら、羽生善治先生が「ここ好き」「熊が出てきちゃったーって言ってました」って奥様がおっしゃってて。みなさん優しくてよかったと思いました。

――羽海野先生は売れたのが遅い人じゃないですか。それが考え方とかに影響している部分ってあります?

羽海野 早く始めても遅く始めてもいいところと悪いところがあるじゃないですか。いろんなことが……そんなにわかってなかったんだとは思うんですけど、わかってから描き始めたから、登場人物の年齢層が広く描けることと、みんなの立場がなんとなくわかるところがよかったなと思うんです。ただ、体力がないので……。

若いうちにデビューして売れた人が描ける枚数より圧倒的に少ないんですよ。読んでいる人のお母さんより年上の私なので、これは苦しいけど年齢を発表してないから、みんな「描くの遅せえよ!」って言ってるんですけど、「ごめん! 君のお母さんより年上なんだよ」って(笑)。

――「これでも精一杯頑張ってるんだよ」って。

羽海野 坐骨神経痛を抑えながら頑張ってるんだけど、みたいな感じですね。それもあって、そろそろ年齢をバラさないと、「描け」とか「サボッてる」とか言われるから。

――ベストを尽くしてるのに!

羽海野 超ベスト尽くしてるんですけど(笑)。

――漫画は体力だなってホントに思いますね。

羽海野 ね、気力、体力ですね。気力はあんまり落ちていかないので、体力だけですね。体が追いつかなくなってきて、寝て起きたらもっと疲れてる、みたいな。どうすればいいの? って感じかな。

――最近、魔夜峰央先生に取材したら、目が悪くなって細かいまつ毛とか描けなくなったから、もう美少年が描けなくなったって言ってました。

羽海野 一条ゆかり先生が、デジタルにしたらどこまでも拡大できるから、目は悪くなってたけどまつ毛ピンピンに描けるって言ってました。でも、デジタルが覚えられません(笑)。

――そっちもダメだった!

羽海野 アカンかったです。ただ、担当さんがいい人で、「金のガチョウの腹は裂きません、卵産めなくなっちゃうから」って。体調とか様子を見ながら、「今号はこれでいいです」とか言ってくれる人でホント助かってます。「俺も最近疲れるからわかります」って言ってくれるから。
※フラウ2017年4月号より一部抜粋

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