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岡本健一さん『炎 アンサンディ』インタビュー [おとなスタイル]

2017年03月14日(火) 09時00分配信

6役を演じ分け。 役によって体つきまで変わる

シェイクスピア作品をはじめ、舞台で豊かな演技力を開花させている岡本健一さん。彼が挑むのは、再演となる『炎 アンサンディ』という、カナダに住む中東系の家族がそのルーツを辿る物語だ。
母ナワルは心を閉ざし、口をつぐんだままこの世を去る。残された姉弟は遺言に従い祖国に帰り、母の壮絶な人生、自分たちの宿命を知ることになる……。2014年の初演時、あまりに残酷な結末が観る者を震撼させた。

「椅子と穴しかないセットで、過去と現在、カナダと中東と、シーンがポンポン飛ぶから、つながりがどう見えているのか未だにわからない(笑)。ただ、終演後、楽屋に来てくれた友人たちが、言葉を失っていたのを覚えています。
そして数日後には、涙を流しながら感想を伝えてくれるっていう……、すぐには受け入れられない話です。初演時はちょうどISのテロが話題になった時期。世界はよりひどくなっているから、余計にこの作品を大切に届けなければいけないという思いがあります」

岡本さんはこの物語で6役を演じる。役によって姿勢や体つきまで別人になるのには目を見張るほど。中でもロックを歌いながら人を殺すスナイパーのニハッドと、主人公ナワルの恋人ワハブは真逆の人物像といえるだろう。

「この話に限らず、同じ人は二人といないということがベースにあります。この人物はどんな環境で育ったのか。どういう声色で喋り、どんな姿勢でどんな身体の癖があるのか。調べて役を造形すると、必然的に個性が出ます。
ニハッドは加害者の立場だけど、本人にしたらそれが正義。武器の扱いを教えられ、敵を撃ったら褒められる、そうしないと生きていけない環境で育ったから。そして演じるのが哀しい、ワハブ。ナワルと心から愛し合って子供ができたのに、『こうして一緒になれたから、これからは大丈夫』という言葉を残して、周りから許されず離れ離れに。皆違うけど、皆純粋なんです」

役柄を語る口調から、愛情が溢れる。
昨年は大河ドラマ『真田丸』に出演。毛利勝永という勇猛果敢な役柄で確固とした地位を築いた感もあるが―。

「もっともっと成長しないと。作品のルーツの土地に行って見聞きしたり、舞台や映画、音楽などで、自分が敵わない人に会うと感動して、自分がこうなれたら? って、いつも考えます。その醸し出す雰囲気に辿り着きたい、作品の中で自分もそう在りたいと」

酒を飲む時間があるなら役作りに心血を注ぐ

演じることに対してひたむきなのは、10代の頃から変わらない。

「自分ができないのは自覚してたから。おとなたちに怒られないように、遊びの時間は、役について調べ考える時間に当てていました。“付き合い”って何になるの? “自分の学び”の方が大事でしょ、って思うんです。最近は俳優を目指す若い人たちに教える機会もあるので、教えるっていうプレッシャーが自分の学びのモチベーションにも。若い人と接することでの発見もありますしね」

昨年末はジャニーズカウントダウンライブに親子共演したことで話題になったのも、記憶に新しい。

「年に一度のあのライブは、年齢もバラバラで、なんかファミリー感に溢れているんです(笑)。皆共通しているのは、一番多感な10代に吐き出す場所を与えてくれた、ジャニーさんに育てられたこと。今はしっかりしている子が多いけど、俺らの頃は更生施設みたいなものだったから(笑)」

アイドル時代を彷彿とさせるステージで客席を魅了した岡本さん。最新作の『炎 アンサンディ』では、今回新たな演出が加わるのも楽しみだ。

「再演といっても、また発見がいっぱいあるし、新たな感情も生まれる。より深いものになると思います。この作品は話に聞くだけでは絶対に伝わらない。実際に観て共有して欲しいです」
『炎 アンサンディ』

“世界が混沌とする今だから、大切に届けたい”

『炎 アンサンディ』

母を亡くした姉弟が、中東の内戦を背景に、母の人生を辿り、家族愛、革命、殺戮など、過酷な現実と向き合う。麻実れいが主人公ナワルの10代から60代までを演じる。

作/ワジディ・ムワワド
演出/上村聡史
出演/麻実れい、栗田桃子、小柳友、岡本健一ほか。
“岡本さんのひとり時間”といえば?

尊敬する山崎努さん。

“岡本さんのひとり時間”といえば?

「山崎努さんは僕が10代の頃に演劇の世界を教えてくれた人。ドラマで共演したときは、シーンを創り上げる姿勢に大きな刺激と衝撃を受けました。何よりも自分の時間を大切にして生きている尊敬する人です」

 
■Profile
岡本健一さん[俳優]
おかもと・けんいち
1969年東京都生まれ。「男闘呼組」のメンバーとしてデビュー。演技力を評価され、名だたる演出家の舞台に出演。『ヘンリー六世』(鵜山仁演出)で第17回読売演劇大賞優秀男優賞受賞。最近作は『ヘンリー四世』。

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