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“家族の形を想う”話題の映画『彼らが本気で編むときは、』 [おとなスタイル]

2017年03月13日(月) 08時55分配信

心の中に抱いていた違和感をオリジナル映画として昇華

大ヒット作『かもめ食堂』のほのぼのとしたイメージから“癒やし系”と称されることの多かった映画監督・荻上直子さん。5年ぶりとなる新作『彼らが本気で編むときは、』は、彼女が「もはや、癒やしてなるものか!」との決意を胸に撮り上げた、転機となる作品だ。 テーマのひとつは、社会的にも関心が高まっているセクシュアル・マイノリティ(LGBT)。性別適合手術を終えたトランスジェンダーの女性を主人公に、様々な家族の形が描かれる。
“もはや、癒やしてなるものか!  そんな思いで挑みました”

映画監督・荻上直子さん。

“もはや、癒やしてなるものか! そんな思いで挑みました”

「きっかけは2年ほど前に“性は男と女だけじゃない”という見出しの新聞記事を目にしたことです。記事で紹介されていた、女性になった息子を持つお母さんにすぐ連絡を取り、会いに行きました。世間の『こういう子は可哀想』という捉え方に対し、彼女は『いや、うちの子はトランスジェンダーでも明るく育っているし、私はこの子を育てていて、本当に楽しかった』と仰っていて。偏見の壁がない、すごくおおらかで素敵なお母さんでしたね」

荻上さんは20代の6年間、アメリカの西海岸に留学し、’12年から1年間は文化庁の海外研修制度で子どもを連れNYに滞在した経験がある。アメリカでは日常生活で出会っていたセクシュアル・マイノリティの人の数が、日本では少なく感じることに違和感を抱き、いつか作品にしたいと考えていた。
「ただ、当事者でもない私が、トランスジェンダーの人のことを描いていいのだろうか? という思いがずっとあって……。と言っても、サッカー選手じゃない人がサッカーの映画を撮ってもいいわけで(笑)。自分の中で何回も何回も問い質して『自分には偏見は絶対的にない!』という確証がちゃんとおなかに落ちていれば、私が撮ってもいいんじゃないかなと思いました」

これまでの作品でも、周囲に迎合することなく、自分の内面を見つめる、どちらかといえばマイノリティ的存在の人々を描いてきた。家族を描いた本作でも、その多様性は変わらない。
「私自身、長年一緒に暮らしているパートナーとの間に双子の娘がいますが、結婚はしていません。だから最近、夫婦別姓の話が出てくると、やっぱりすごく気になって。『夫婦別姓だと子どもが可哀想』とか『家族の絆が……』などと言われると、うちの家族の絆を他人にとやかく言われる筋合いはない!と思ったりして(笑)。自分たちが幸せなら、家族の形は人それぞれでいいんだという私の想いが、映画を観た方の胸に刺さってくれたら嬉しいですね」
『彼らが本気で編むときは、』

(C) 2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会 配給:スールキートス

『彼らが本気で編むときは、』

小学5年生のトモは、母と二人暮らし。ある日、突然、母が姿を消し、ひとりきりになったトモは、叔父マキオの家に向かう。マキオはリンコという美しい恋人と一緒に暮らしていた。リンコはトモが初めて出会う、トランスジェンダーの女性だった―。出演は生田斗真、桐谷健太、柿原りんかほか。

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“荻上さんのひとり時間”といえば?

DVD/私物

“荻上さんのひとり時間”といえば?

『過去のない男』
「フィンランドのアキ・カウリスマキ監督作品に共通するのは人間の孤独感。本作の主人公は記憶を失った男で、自分と向き合う時間が描かれています」

 

■Profile
荻上直子
おぎがみ・なおこ
1972年千葉県生まれ。2003年『バーバー吉野』で長編映画デビュー。
’06年『かもめ食堂』の大ヒット以降、’07年『めがね』、’10年『トイレット』、’12年『レンタネコ』と作品を発表。海外の映画祭でも注目を集めている。

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