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日本アカデミー賞最多部門受賞『怒り』監督インタビュー [おとなスタイル]

2017年02月21日(火) 09時00分配信

疑ってしまう人たち。自分と切り離せない物語

2017年1月に発表された、第40回日本アカデミー賞で最多となる11部門を受賞した映画『怒り』。監督は、現代の日本映画界を牽引し、トップクラスの俳優たちが絶大な信頼を寄せる李相日(り・さんいる)監督。
昨年9月より公開された新作は、世界を席巻した『悪人』以来、6年ぶりのタッグとなる吉田修一の小説を映画化したヒューマンミステリーだ。

李相日(り・さんいる)監督。

「とある殺人事件を軸にしつつも、『自分の出逢った人が殺人犯なのでは?』と疑ってしまう人々の心の揺れ動きに、大きく焦点が当てられているところに魅力を感じました。その視点によって、観客にとっても自分とは切り離せない、生々しい感覚を味わう物語になります」

LGBTの悩み、沖縄の基地問題など、現代社会が抱える様々なテーマを背景に映し出されていくのは、人間の心に潜む闇。その人間の本性を体現すべく、渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡といったオールスターキャストそれぞれが迫真の演技で新境地を拓いている。

「俳優にはその“役を生きる”ことを望みます。一人一人と対話を重ねながら、方法論を探る。例えば、妻夫木くんと綾野くんは撮影中、劇中の役柄と同じように同居していますし、森山くんは撮影前から一人で沖縄入りして無人島生活を体験。宮崎さんは実際の風俗店に赴おもむいて働いている子たちと話し、観察していました。なにが正解かは僕にも分かりませんが、ひとつひとつの経験がギリギリまで悩んだり、考えるための材料になる。その肉付けこそが俳優たちの中で劇的な変化を創るのだと思います」
『怒り』

“対話を積み重ねることでしか生まれないものがある”

『怒り』

都内の閑静な住宅街で起こった夫婦殺人事件。犯人は顔を整形し、逃亡を続けていた。事件から1年後、千葉と東京と沖縄に、素性の知れない3人の男が現れて―。3つのエピソードが織り成す濃厚な人間ドラマに圧倒される。
李相日監督が選ぶ“シンプル”といえば、この映画!

DVD/私物

李相日監督が選ぶ“シンプル”といえば、この映画!

『ドッグヴィル』
鬼才ラース・フォン・トリア監督による実験的でダークな野心作。「広大な倉庫の床にラインを引いただけのシンプルな舞台で、まざまざと風景を感じさせてしまう俳優陣の存在感がすごい」
■Profile
[映画監督]
李 相日さん
り・さんいる
1974年、新潟県生まれ。2006年の『フラガール』で日本アカデミー賞最優秀作品賞、監督賞をはじめ、数々の映画賞を独占。’10年『悪人』、’13年『許されざる者』など国内外で高い評価を得ている。

 

『おとなスタイル』Vol.5 2016秋号より
(撮影/森本洋輔)

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