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酒井順子「堂々と生きる・装う」 [おとなスタイル]

2017年01月25日(水) 18時20分配信

イラスト/松園量介

流行も押さえておきたい、華奢感を出したい、異性ウケも良い方が…といった願望と、実際、何を着ていいのか分からず服の着こなしに悩むおとな世代に向けて、
「服を素敵に見せるのは、それまでの人生の中でそれぞれが築いてきた、自信。長年鏡を見続けたことによって導き出された、自分の脚を最も美しく見せる丈のスカート、大切な人にもらった指輪など、「これ」というものを身に着けることによって堂々としていられることが、あるものです」
とエッセイスト・酒井順子さん。

積み重ねの無いところに自信は生まれない

それは衣服やアクセサリーだけではないのでしょう。子供を大切に育んできたという自負、とか。大好きな仕事をしている喜び、とか。目に見えない経験や記憶もまた、その人の背筋に通る一本の芯となるのではないでしょうか。

知人は「おばちゃんが突然ジーンズを穿いても、絶対に似合わない」と言いましたが、それはすなわち「積み重ねの無いところに、自信は生まれない」ということだったのです。
若いうちであれば、根拠の無い自信を持つことができたかもしれないし、それが若者を前に進ませる原動力にもなりましょう。しかし長い人生を過ごしてきた者にとって、自信にはやはり根拠が必要。積み上げてきた過程を自分が知っているからこそ、堂々とすることができるのです。

また、ご近所に住む九十二歳の女性はいつも素敵な格好をしていらっしゃるのですが、この前一緒にランチをした時に着ていたのは、カラフルなプリントTシャツに白いパンツでした。藤色に染めた髪が、その上下に実によく映えている。

「これ、上下ともユニクロなのよ。あそこ、安くていいわね」

と、その女性。
言われるまでは、どこかの海外ブランドのTシャツだと思っていた私は、その言葉にびっくりしました。ユニクロのTシャツをこれほど上手に着こなしている人が他にいるだろうか、と。
彼女は、子育てを終えて夫に先立たれた後は、自分で事業を起こしてつい最近まで働いていたという方。知的好奇心も旺盛で、今でも手土産には、「本が一番ありがたいわ」とおっしゃるのです。その、「やることはやってきた」という生きざまと好奇心とが、ユニクロのお店まで行く気持ちと、そこから自分にぴったりのTシャツを選ぶ力をもたらしているのでしょう。

 

“積み上げてきた過程を

自分が知っているからこそ、

堂々とすることができる”

 

■Profile

酒井順子
さかい じゅんこ
エッセイスト。1966年東京都生まれ。2004年『負け犬の遠吠え』で講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞を受賞。著書に『ユーミンの罪』『オリーブの罠』『裏が、幸せ』『「来ちゃった」』『子の無い人生』など多数。

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