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映画監督の“ユーモア”はこうやって生まれていた! [おとなスタイル]

2017年01月21日(土) 09時30分配信

(c)2016「疾風ロンド」製作委員会

舞台は雪山。アクション・シーンも満載。人気ミステリー作家・東野圭吾自身も「映像化は無理だろう」と言っていた小説『疾風ロンド』を今回見事に映画化したのが、吉田照幸さんだ。
スクリーンに反映された現場の温かい空気感

吉田照幸さん

スクリーンに反映された現場の温かい空気感

サラリーマンの悲喜こもごもを題材にした『サラリーマンNEO』や、社会現象にまでなった『あまちゃん』などの演出を手がけた彼が、まぶしい銀色のゲレンデをキャンバスに、多様なキャラクターたちが織り成す、軽やかで爽快なサスペンス劇を創り上げた。

「日本の映画の“笑い”というと、ちょっと尖った笑いが多いんですよね。一方、僕がやってきたのは、ふつうの人の日常生活の中で起こるクスクスした笑いです。今回は、主人公が研究員とはいえ、給料をもらって組織の中で生きているサラリーマン。それをコメディにしたいと言われたので、すごく興味深いネタだなと思いました(笑)」

雪上アクションの迫力と臨場感に思わず手に汗握る映像や、様々な人間ドラマなど見どころは多々あれど、やはり一番の魅力は、各キャラクターからほのぼのとにじみ出るおかしみだ。

「たとえ困った人たちでも、描き方によっては笑えるし、結果的に勇気づけられたりもする。逆に相手に対して不満しかないのは、自分の物の見方が一方的になっている証拠。本来、相手がいて、自分がいる。それを俯瞰で見れば、お互いに違う考え方を持っていることがわかるので、文句ではなく、違う角度でものが言えるようになってくるんです。自分と他者は違う、ということを本当に認識しないと、ユーモアって生まれない。まず、自分の内なる声に耳を傾け、自分が見ている風景をちょっとだけ客観視してみること。それがユーモアのコツだと思います」

1ヵ月半にわたる極寒の雪中での撮影で、吉田さんがスタッフに提示した注意事項とは“現場では怒鳴らない”と“寒い、滑るは禁句”のふたつ。

「怒鳴らないと決めておくと、カーッとしても、ひとまず怒りをおさめるんですよね。そもそもイラッとした感情をぶつけてしまう人は、自分を見失っているから怖くなる。しかも見失っている人に何を言われても、説得力ゼロなんです(笑)。あとは、どんな職場でも言えることですが、いい雰囲気じゃないと、おもしろいものが生まれないと思っています。だから、監督っていうのは、そういう雰囲気を作ることが役割だし、もしかしたら主婦というのは、実際は家庭の中のいい雰囲気を作る監督なのかもしれないですね」
“他者との違いを認識することでユーモアが生まれる”

(c)2016「疾風ロンド」製作委員会

“他者との違いを認識することでユーモアが生まれる”

『疾風ロンド』
危険な違法生物兵器が医科学研究所より盗まれた。主任研究員・栗林は、所長の命令で、生物兵器を秘密裏に回収する役目を押し付けられるのだが……。クスッとさせるユーモアと疾走感あふれるアクションの融合にワクワクする。出演は阿部寛、大倉忠義、大島優子、ムロツヨシ、柄本 明ほか。
吉田照幸さんが選ぶ“ご機嫌”といえば、この映画!

DVD/私物

吉田照幸さんが選ぶ“ご機嫌”といえば、この映画!

『ホットファズ―俺たちスーパーポリスメン!―』
「あまりにも有能なため、周囲に疎まれて、田舎町に左遷された警察官が主人公。
常識がどんどん覆されていく展開がおもしろい、英国コメディです」
■Profile
[ 映画監督・演出家]
吉田照幸さん
よしだてるゆき
1969年山口県生まれ。’93年NHK入局。
2004年に『サラリーマンNEO』を企画し、演出を担当。’11年に『サラリーマンNEO 劇場版(笑)』で映画初監督を務める。’13年に連続テレビ小説『あまちゃん』の演出を担当。

 

『おとなスタイル』Vol.6 2017冬号より
(撮影/森本洋輔)

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